2019 Fiscal Year Research-status Report
現代韓国語の尊敬形の不使用基準に関する研究:社会言語学的観点と文法的観点から
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17K13449
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
金 アラン 上智大学, 言語教育研究センター, 准教授 (90711135)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 尊敬形の不使用 / ‘-si-’ / 主体敬語 / 韓国語 / 話し言葉コーパス / 日韓対照 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年度は,話し言葉コーパスをデータとし,尊敬形‘-si-’を用いて話す相手に対して,どのような時に一時的な‘-si-’の不使用が見られるかを分析した。その結果,(1)話題に関する詳細な情報を聞く時,(2)補足情報を付け加える時, (3)情報量が多い人が少ない人に対して何かを指示したり禁止したりする時,(4)相手の言動に対して不満を述べる時に,一時的に‘-si-’が用いられない場合があることが分かった。文法的な面に焦点を当てると,(5)述部が省略された,連結語尾で終結する発話,(6)複合動詞における前項動詞,(7)連体形で,‘-si-’の不使用が見られることが確認できた。また,当初は韓国語のみを対象として調査を行ったが,他の言語と比較・対照することで韓国語の特徴がより明確に見えてくると考え,日本語の尊敬語の使用・不使用状況についても調査を行った。日韓それぞれの話し言葉コーパスを分析した結果,次のようなことが明らかになった。韓国語では年下であっても丁寧体で話す相手であれば,尊敬形‘-si-’を用いることが多く,‘-si-’の一時的な不使用もよく見られる。それに対し,日本語の尊敬語「お~になる」「~(ら)れる」は使用範囲が限定的で,韓国語の‘-si-’ほど広く使用されるわけではないが,尊敬語を使用すべき相手だと認識すれば丁寧度を維持するために尊敬語を使い続ける傾向が強く,一時的な不使用があまり見られない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
尊敬形‘-si-’を用いて話す相手に対して,どのような時に一時的な‘-si-’の不使用が見られるかを明らかにすべく,ドラマ・映画のシナリオと話し言葉コーパスをデータとし,話し手と聞き手との社会的・心理的関係,発話状況や発話内容,共起する文法要素や語彙,‘-si-’の不使用による談話効果等に焦点を当てて分析を行った。その結果の一部は学会で発表している。また,日本語の尊敬語「お~になる」「~(ら)れる」と‘-si-’を対照することで,‘-si-’の使用範囲や機能について再考した。当初,韓国語のみを対象としていたが,他の言語と比較・対照することで,より深い考察ができると考え,日本語の尊敬語の使用・不使用現象についても調査を行った。そのため,当初の計画よりも時間を要した。また,自然会話を収集するために韓国へ出張したが,新型コロナウィルスの影響により,協力者を十分に確保できなかったため,研究に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
韓国語母語話者の自然会話を収集し,これまで得られた結果と照らし合わせながら, ‘-si-’の使用・不使用現象を明らかにする。新型コロナウィルスの影響により,対面でのデータ収集が不可能な場合は,Zoomなどを利用してデータ収集を試みる。また,日本語と対照することで,日韓語の共通点と相違点を明らかにし,韓国語の特徴をより明確にする。
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Causes of Carryover |
自然会話を収集するために韓国へ出張したが,新型コロナウィルスの影響により,協力者を十分に確保できなかった。協力者への謝金や自然会話の書き起こし作業の人件費が発生しなかったため,次年度使用額が生じた。令和2年度は引き続き,不足分の自然会話を収集する予定である。年度を越した研究費は当初の計画通りに協力者への謝金と書き起こし作業の人件費に充てる。
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Research Products
(2 results)