2020 Fiscal Year Research-status Report
現代韓国語の尊敬形の不使用基準に関する研究:社会言語学的観点と文法的観点から
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17K13449
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
金 アラン 上智大学, 言語教育研究センター, 准教授 (90711135)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 尊敬形の不使用 / ‘-si-’ / 主体敬語 / 韓国語 / 話し言葉コーパス |
Outline of Annual Research Achievements |
韓国語の尊敬形‘-si-’は主に下位者が上位者を高める時に用いられるが,‘-si-’を使うべき上位者との会話において,時折‘-si-’が用いられない場合がある。尊敬形‘-si-’に関するこれまでの研究は,‘-si-’によって高められる対象(例:人物,事物)や‘-si-’が用いられる状況に主な焦点が当てられており,一連の会話においてどういう時に‘-si-’の一時的な不使用が見られるかについては明らかになっていない。本研究は尊敬形‘-si-’を用いて話す相手に対して,どのような時に一時的な‘-si-’の不使用が見られるかを明らかにすることを目的としている。 2020年度は,21世紀世宗計画コーパスの口語をデータとして分析および考察を行った。その結果,以下のような場合に‘-si-’が用いられないことが分かった。まず,話題に対する付加的な情報を聞き手に尋ねる場合や,‘-si-’を用いて相手に何かを指示した後,注意点などを付け加える時に‘-si-’の不使用が確認された。年齢の上下関係にかかわらず,話し手が相手に何かを指示できる立場の場合には,‘-si-’を伴わない禁止文が使用される場合もある。次に,‘-si-’を用いないことで話している内容が一般化できる情報であることを表す場合もあった。最後に動作性が弱い‘issta(いる)’や認知動詞‘alta(知る・分かる)’,可能表現を用いて相手の行動を述べる際にも‘-si-’が用いられない場合があることが明らかになった。この内容は,韓国の学術大会で発表し,『Lingua』(No.31)に掲載された。 2019年度に引き続き,韓国語母語話者による自然会話の収集を継続して行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルスの影響により,日本国内の韓国人留学生が減少してしまったことから,自然会話データを収集するための協力者を募ることが難しかった。そのため,協力者の条件を一部緩和し,日本での滞在期間が長い韓国語母語話者を対象として自然会話を収集した。その結果,一部のデータで日本語の影響を受けた韓国語の使用が見られ,有効なデータと判断できず,2021年も引き続き自然会話を収集することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
対面授業が始まり,韓国人留学生の多くが日本に戻ってきているため,自然会話の収集を再開する。自然会話の録音はZoomを利用する予定である。十分なデータ,有効なデータが収集できない場合は,韓国滞在の韓国語母語話者に協力を依頼する予定である。
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Causes of Carryover |
韓国語母語話者による自然会話が十分に確保できず,協力者への謝金や自然会話の書き起こし作業の人件費が発生しなかったため,次年度使用額が生じた。2021年度は引き続き,不足分の自然会話を収集する予定である。年度を越した研究費は当初の計画通りに協力者への謝金と書き起こし作業の人件費に充てる。
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Research Products
(2 results)