2021 Fiscal Year Research-status Report
現代韓国語の尊敬形の不使用基準に関する研究:社会言語学的観点と文法的観点から
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17K13449
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
金 アラン 上智大学, 言語教育研究センター, 准教授 (90711135)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 尊敬形の不使用 / ‘-si-’ / 主体敬語 / 韓国語 / 社会言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
韓国語は、年齢や立場などの上下関係によって言葉の使い方が大きく変わる言語であり、例えば大学の先輩・後輩の関係において、後輩が先輩に対して日本語の「お~になる」「~られる」に該当する尊敬形‘-si-’を使う場合が少なくない(例:先輩、この本、お読みになりましたか)。しかし、敬語の使い方には上下関係以外に、親疎や発話場面の格式性・非格式性、発話内容など、様々な要因がかかわっており、実際の使用では、同一の相手に対して尊敬形‘-si-’が使われたり使われなかったりすることが観察される。本研究は「尊敬形‘-si-’+丁寧体」が基調となる会話において、どのような時に一時的な‘-si-’の不使用が見られるかを明らかにすることを目的としている。2021年度は、主に2019~2020年度に収集したデータ(ドラマや映画の台詞、話し言葉コーパス)を総合的に分析・考察した。韓国では初対面の人や年齢差の大きくない上位者に対して、最初は「尊敬形(‘-si-’)+丁寧体(hapnita体・hayyo体)」で話すが、親密度が高くなるにつれて「無尊敬形+丁寧体」、同等の関係であれば「無尊敬形+非丁寧体」へと会話の基調が変化していく。尊敬形‘-si-’の一時的な不使用は「尊敬形+丁寧体」から、‘-si-’を使用しない「無尊敬形+丁寧体」へ移行する過程でよく見られる。コミュニケーションの究極的な目的は円満な対人関係の維持にある。話し手は‘-si-’の不使用による相手の反応が肯定的かどうかを見極めながら、‘-si-’の不使用回数を増やしていくが、それは相手とより親密な関係を築こうとする現れと捉えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ドラマ・映画、話し言葉コーパスのデータは計画通り揃えることができたが、自然会話を収集するのに時間がかかっている。当初は、韓国で韓国人の会話を収集する予定だったが、新型コロナウィルスの影響により、それができなかった。そのため、協力者の条件を一部緩和し、日本国内の韓国人留学生の会話を収集しようとしたが、多くの留学生が韓国に帰国してしまったため、協力者を集めるのが困難だった。
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Strategy for Future Research Activity |
入国制限緩和により韓国人留学生が日本に戻りつつあるため、自然会話の収集を再開する。十分なデータ、有効なデータが収集できない場合は、韓国滞在の韓国語母語話者に協力を依頼し、Zoomでデータを収集する予定である。収集したデータは、文字化作業とラベリング作業を通してデータベース化し、文法的側面や社会言語学的側面など、多方面から分析・考察を行う。その結果は、学会で発表し、論文化する。
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Causes of Carryover |
韓国語母語話者による自然会話データを十分に確保することができず、協力者への謝金や自然会話の書き起こし作業の人件費が発生しなかったため、次年度使用額が生じた。2022 年度は引き続き、不足分の自然会話を収集する予定である。年度を越した研究費は当初の計画通りに協力者への謝金と書き起こし作業の人件費に充てる。
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