2017 Fiscal Year Research-status Report
中国青海省大通県チベット族居住地域の漢語方言調査研究
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17K13452
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
川澄 哲也 松山大学, 経済学部, 准教授 (30590252)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 漢語 / 言語接触 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では中国青海省大通回族土族自治県のチベット族集住地域、および漢族・チベット族雑居地域の漢語方言2種を扱う。この2方言はともにチベット語の影響で変容を来した漢語であると考えられるが、両者の形成過程には"negotiation"とよばれる言語変容原理の解明につながる社会背景の差異が存在する。本事例の調査研究を通じて当該原理に対する実証的考察を進めるとともに、本研究と先行研究のデータを統合し、漢語がチベット語・モンゴル系言語それぞれと接触した場合に起こり得る変容の類型を構築する。この類型構築は、中国西北部に分布する成立過程が未詳の漢語諸変種の形成史を言語特徴から推測するのに役立つ。 上記研究目的の達成に向け、初年度はまず、チベット族集住地域と漢族・チベット族雑居地域として適切な地の選定を進めた。また、実地調査において使用する言語調査票の作成・整理を行った。加えて、青海省一帯の民族史に関する史料および中国西北地方の漢語方言に関する資料を幅広く収集した。主要な成果としては以下の二点を挙げたい。一つは、西寧方言や唐汪話、元代蒙式漢語といったモンゴル系言語との接触を経験した漢語変種のデータを総合的に分析し、モンゴル系言語と接触した場合に漢語が如何に変容し得るかの類型を提出したことである。もう一つは、関連史料の調査研究に基づき、従来成立過程が不詳であった漢語河州方言(青海省循化から甘粛省臨夏一帯で行われている漢語変種)の形成史を明らかにしたことである。これら成果はいずれも学術論文にまとめて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では初年度から実地調査を行う予定であったが、家庭の事情により実施を見送ることとなった。この点、遅れが生じていると言わざるを得ない。但し、本来2年目以降に進める予定であった詳細な文法調査票の作成・整理を前倒しして行ったため、今後回復が十分に可能な程度の遅れに留まっていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に作成・整理した語彙および文法の調査票を利用し、大通県2地点の漢語方言の実地調査を進める。まずは語彙調査を進め、それに基づいて音声学的な記述を行い、合わせて音素分析を施す。続いて体系的な文法調査を進める。そしてそれぞれの調査結果から、チベット語の影響と考えられる特徴を抽出していく。ここで得られた諸特徴を、四川省の倒話、甘粛省の白龍江方言、青海省の五屯話といったチベット語と接触した他の漢語変種のデータと統合し、漢語がチベット語と接触した際に起こし得る変容の様態を類型化する。
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Causes of Carryover |
家庭の事情により、当初初年度に計画していた実地調査を行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。これについては、平成30年度に当初の計画より長期間の調査を行うための費用として使用する。
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Research Products
(2 results)