2019 Fiscal Year Research-status Report
中国青海省大通県チベット族居住地域の漢語方言調査研究
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17K13452
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
川澄 哲也 松山大学, 経済学部, 教授 (30590252)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 漢語 / 方言 / 言語接触 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は8月に2週間程度、中国青海省大通県東狭鎮出身の漢族男性のご協力のもと、当該方言の語彙・音韻・文法に関する実地調査を行った。やや古い統計ではあるが、2000年の調査では、東狭鎮は大通県内の郷・鎮において最も多くチベット族が居住している地である(5177人)。同鎮の漢族居民数は9987人とあり人口比はおよそ1:2、申請書に記載した「雑居村」に該当する。 語彙調査では約2000項目を収集した。青海省一帯の漢語方言では多音節語内での変調(tone sandhi)の振舞いが周辺諸方言に比して特異であることが多いため、それぞれの「字」の原調を知ることが重要である。この観点から、単音節語のデータを多く得られるように留意して作成した調査票を用い調査を行った。調査後の研究によって音声面の分析は一通り終了しており、子音音素24種、母音音素8種を抽出した。また声調に関しては、音節声調ではなく、語声調の性質をもっていることが明らかとなった。 文法調査では、例文約100を集めつつ、様々な追加の聞き取りや文法テストを行った。「離合詞」の用法を始めとするいくつかの点で、従来調査を行った大通県の他地域との違いが見出された。 実地調査関係以外では、2次資料を利用して、青海省海東市民和県甘溝郷の漢語方言について研究を行った。この方言は従来、モンゴル系言語「土族語」の影響によって変容した漢語変種と見做されてきたが、言語特徴から判断すると、チベット語からの影響も無視できないことを指摘した。また、今後の当該方言の研究進展に寄与し得る資料も作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3年目終了段階で、大通県チベット族居住地域のうち「雑居村」の漢語方言調査研究が一段落しており、この点は当初の計画通り進行していると判断できる。一方で、チベット族が多数を占める「チベット族村」については、協力者の都合により調査に入ることができなかった。但し、協力者自体は選定済みであり、かつ調査票も出来上がっているため、「遅れている」と評価するほどの遅延ではないと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本来は2020年度夏季に大通県向化郷の「チベット族村」にて、チベット族の漢語話者に対する調査を行う予定であったが、目下のCOVID-19の状況から見ると厳しい状況にある。今夏、同郷での調査が叶わない場合は、上海師範大学の王双成教授のご協力を仰ぎ、オンラインにて青海省門源県の漢語方言調査を行う予定にしている。王教授は門源県出身のチベット族である。加えて門源県は、本来調査予定だった向化郷と隣接する地である。そのため、王教授への調査を通じ、本来計画していた「大通県向化郷のチベット族が話す漢語方言」に準じるデータを得ることが可能である。
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Causes of Carryover |
レートの変動により、洋書の購入代金が予測より下がったことによる。次年度、他の書籍の購入に当てる。
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