2017 Fiscal Year Research-status Report
モンゴル語のアスペクト体系の生成と進化に関する研究
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17K13453
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Research Institution | Nagasaki University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
松岡 雄太 長崎外国語大学, 外国語学部, 准教授 (40526688)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | モンゴル語 / アスペクト / 補助動詞 / 文法化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、1)モンゴル語のアスペクト的意味を表す補助動詞のうち、動作が開始局面にあることを表す「ekile-」(日本語の「始まる」や「始める」に相当)、動作が終了局面にあることを表す「daGus-」と「bar-」(日本語の「終わる」や「尽きる」に相当)、及びその他動詞形である「daGusqa-」と「barGa-」について、2017年9月に内蒙古大学(中国内蒙古自治区フフホト市)、2018年3月にモンゴル国立教育大学(モンゴル国ウランバートル市)において、それぞれ同大学の学生を対象にインタビュー並びにアンケート調査を実施した。結果、第一に、終了局面に言及する複数形式の意味・用法の違いが明らかになった。内蒙古のホルチン方言において自動詞の「daGus-」、「bar-」が動作の単なる終了を表す無標形式であるのに対し、他動詞の「daGusqa-」、「barGa-」は動作の終了局面に至るまでの過程にも言及する有標形式である可能性が高い。第二に、特に動作の終了局面に言及する形式間に、方言差があることが明らかになった。ホルチン方言とモンゴル国のハルハ方言との間では、「bar-」の意味解釈が異なる。これらの成果については「モンゴル語における動作の開始と終了を表す補助動詞に関する予備的考察」という題目で研究発表を行った。第三に、上記の補助動詞には共起できる動詞句に制限があることも明らかになった。この成果は次年度に発表を予定している。 2)補助動詞に関する文献の収集を行なった。モンゴル語の文献は現地調査を実施した内蒙古大学の図書館並びにウランバートル市の国立図書館において、また韓国ソウル大学の図書館では韓国語の文献も収集した。韓国語はモンゴル語と文法的に似た特徴があるのみならず、韓国語の補助動詞に関する先行研究はモンゴル語よりも多く、本研究課題にも参考になる点が多いと考えるためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究実施計画は、モンゴル語のアスペクト的意味を表す補助動詞のうち、開始と終了の局面を表す形式について、夏季休暇中を利用して、現地調査を行なうというものであったが、この現地調査は当初の予定通りにほぼ実施できた。ただし、共起する動詞句に対する調査結果の分析は現在も作業進行中であり、2019年度内に整理しきれなかった。しかし、この点は次年度早々にまとめられる見込みであり、まとまり次第、成果を公表したいと考えている。 また研究実施計画で予定されていた夏季休暇中の現地調査の結果、方言差をより綿密に調べる必要性が出てきたことから、年度末の冬季休暇中にモンゴル国においても追加現地調査を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の年次計画に従って調査研究を進める予定であり、目下大きな変更点はない。 なお、2019年度は研究協力者のBadma氏(内蒙古大学)とともに調査を行なったが、同氏を介して調査期間中に新たな研究協力者候補を数名紹介してもらった。そのため、次年度以降はより柔軟かつ多角的に現地調査を実施していけると考えている。
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