2019 Fiscal Year Annual Research Report
Descriptive study on the generation and evolution of the grammatical aspect in Mongolian
Project/Area Number |
17K13453
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
松岡 雄太 関西大学, 外国語学部, 准教授 (40526688)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | モンゴル語 / アスペクト / 補助動詞 / 文法化 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である令和元年度には、以下の2点の研究調査を実施した。 1)モンゴル語においてアスペクト的な意味を表す補助動詞のうち、「oroqu」(日本語の「入る」に相当)と「qocorqu」(日本語の「遅れる」に相当)を対象に、記述調査を行なった。調査は2019年8月下旬に内蒙古大学(中国内蒙古自治区フフホト市)において、本研究の研究協力者であるBadema氏にインタビューを取る形で実施した。調査の結果、「oroqu」の意味は、先行研究が「転変体」(ある状態から別の状態になる)と記述した通りであるのに加え、本動詞の語彙的意味の残存に起因すると考えられる使用制限があることが明らかになった。この「oroqu」は、初年度に調査した「ekilekU」(日本語の「始める」に相当)と意味・用法に似ている部分もあるが、「ekilekU」に比べ、文法化が進んでいない段階にあると結論づけた。同様に、「qocorqu」は「oroqu」よりもさらに使用制限が強く、ほとんど文法化していないことが明らかになった。 2)モンゴル語と同類型に属する朝鮮語の補助動詞のうち、「danida」(日本語の「通う」に相当)の調査も、モンゴル語との対照研究の観点から実施した。朝鮮語の「danida」は、従来の研究において補助動詞と認められていなかったが、文法化の観点からその意味・使用制限などを記述すると、文法化の進んでいない補助動詞の一つとして認められることが明らかになった。 本研究の意義は、従来、詳細が明らかでなかった諸形式の意味・用法の記述が進んだことに加え、補助動詞には文法化が進んでいる(使用制限が少ない)ものと進んでいない(使用制限が多い)ものが段階的に存在する点を明らかにしたことにある。補助動詞は全てを一律に補助動詞として記述するのではなく、文法化レベルを考慮して体系化する必要があると言える。
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