2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13455
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
當山 奈那 沖縄国際大学, その他部局等, 研究員 (90792854)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 与論方言 / 国頭語 / 伊平屋方言 / 記述文法 / 受動文 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、国頭方言に属する与論島の与論方言、沖縄島北山原方言に属する伊平屋島方言において、(1)音韻論・形態論の調査と分析、(2)構文論の調査と分析、談話資料の収集と書き起こしを実施した。 音韻論・形態論の調査と分析については、調査票を作成し、細かい調査項目については、各方言で研究実績をもつ研究者の助言を得て、各方言の特徴にあわせて適宜項目を修正・補充した。調査可能な地点から調査を実施した。予測して作成した調査票ではあわない地域ごとの特徴的な言語現象の存在を発見することも十分考えられたため、調査票は状況と進捗に応じて適宜修正・追加を行った。 構文論の調査と記述、談話資料書き起こしについては、収集した一次資料(音声・映像)に、文法調査の結果も参考にしながら、アノーテーションとしての音韻表記、形態素ごとの意味機能のグロス、日本語対訳を付した。その際は、アノーテーションをつける専用ソフトELANを用いた。聞き取れなかった箇所や新しい接辞や構文がみられた場合は、話者と一緒に聞きながら発音と意味の確認作業を行った。また、一次資料の管理として、記録日時・場所、使用言語、話者および臨席した調査者、関連する言語学的特徴、トピック、ジャンルなどのメタデータを記録した。 伊平屋の音韻体系、名詞の格の体系および、アノーテーションの成果の一部は、『文化庁委託事業報告書平成29年度危機的な状況にある言語・方言のアーカイブ化を想定した実地調査研究』にまとめ、報告をしている。また、与論島の構文論の調査において、他の方言や日本語にはみられない重要な現象が発見されたため、研究会・学会等で報告を行った。現在、機関誌へ投稿し、受理されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、国頭方言に属する与論島の与論方言、沖縄島北山原方言に属する伊平屋島方言において、(1)音韻論・形態論の調査と分析、(2)構文論の調査と分析、談話資料の収集と書き起こしを実施した。この中で、伊平屋の音韻体系、名詞の格の体系および、アノーテーションの成果の一部は、『文化庁委託事業報告書平成29年度危機的な状況にある言語・方言のアーカイブ化を想定した実地調査研究』にまとめ、報告をしている。また、与論島の構文論の調査において、他の方言や日本語にはみられない重要な現象が発見されたため、研究会・学会等で報告を行った。現在、機関誌へ投稿し、受理されるなど、研究は順調に進展していると評価できる。 ただし、当初の予定では、与論、伊平屋のほかに、沖永良部、奥集落でも同様の調査を実施することになっていた。調査協力者が高齢であるため、体調を崩されたりなどして調査続行が不可能になったり、多忙な方の場合、日程が合わないことがあったためである。国頭語の他の地域の言語変種(伊是名島、野甫島、北山原方言など)に対象地点を変更するか、これまで得たデータだけでも文法概説を作成したり、談話を書き起こしたりする必要があると思われる。しかし、他の言語変種においては記述が進んでいるので、この成果に基づく記述は可能である。これらの事実をふまえて、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、(1)構文論の調査と記述、談話資料書き起こし、(2)補完調査および談話資料の分析を各方言の文法概説へ反映を実施する。 (1)構文論の調査と記述、談話資料書き起こしについては、音韻論と形態論の調査結果を踏まえて、各地点で構文論の調査を実施する。各方言を見渡しながら、方言相互の類似点・相違点をふまえることによって、方言個別のより細かい記述に努める。各方言の言語体系をふまえた上で談話資料の書き起こし(音韻表記、形態素ごとの意味機能のグロス、日本語対訳を付す)を行う。聞き間違い等がないか、実際に話者の方に確認していただくようにする。 (2)談話資料の分析を各方言の文法概説に反映させる、補完調査については、個別方言の記述を進めていくなかで、調査に漏れが見つかったり、わからないところが生じたりすることが考えられるため、確認すべき事象や追加しなければならない項目を調査票に追加し、再調査を行う。例えば、新しい文法事象を発見した場合は、その現象について調査分析を進めた上で、他の方言でもその文法事象に関する調査を実施する。また、談話資料からの知見を踏まえ、該当する項目に記述の追加を行う。その上で話者へ再確認が必要な事項があった場合、補完調査に調査項目を追加する。 (1)と(2)作業は往復的に実施していくと想定している。 なお、類型論的のあるいは琉球語内での対照において重要となる点や言語理論への貢献が見込まれる点について研究会・学会等で報告し、その方言や分野を専門とする研究者と議論することでフィードバックを得る。国内外の機関誌への投稿も行う。
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