2021 Fiscal Year Annual Research Report
A study of Compiled Shomono made at the end of Muromachi period
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17K13464
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
山本 佐和子 同志社大学, 文学部, 准教授 (00738403)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 抄物 / 編纂抄物 / 古文真宝 / 彭叔守仙 / 文英清韓 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中世室町期の「抄物」について、多くの先行説を類聚・列挙した編纂抄物(集成抄物)の言語研究資料としての性格を明らかにすることを目的として、文献資料の発掘・調査と言語事象の記述研究を行っている。 今年度は、資料所蔵先での調査が可能となり、伝本調査から「私抄」と呼ばれる抄物1点の成立経緯および、その言語資料としての性格への影響を明らかにした。また、次期研究課題で扱う、天正~寛永期における抄物の継承・受容の様相を明らかにする抄物や関連資料群を見出すことができた。 彭叔守仙〔1490-1555〕が著述した抄物「古文真宝後集」は、地方大名である能登守護畠山義総〔1491-1545〕の依頼で、短期間に作成された。彭叔守仙が、2年間で本抄を作成できたのは、兄弟弟子の吉甫□興〔生卒年未詳〕が鸞崗瑞左私鈔等複数の先行抄を書入れた「古文真宝」を入手し(彭叔自筆詩文集『猶如昨夢集』中巻)、参照できたためと推定できる。今年度、吉甫書入れ抄の系統に属する書入れのある「古文真宝後集」3点を見出し、うち1点の仮名抄部分を翻刻した。 「彭叔抄」は、現存写本2点のうち1点で「私抄」と呼ばれている。昨年度までに、林宗二編纂「杜詩抄」「東坡抄」など「私抄」と称する編纂抄物の発生には、漢籍や日本古典を平易な仮名文で理解したい受容層の拡大があることを推定している。「私抄」は、時代・地域を超越し得る、通俗的な文語文体を特徴としており、「彭叔抄」の文体も該当する。 また、従来、「彭叔抄」の古活字版・整版は、文英清韓〔1568-1621〕の抄物と推定されてきた。古活字版冒頭に清韓による書入れを翻刻したと思しい一節があるためである。夙に、寛永整版「古文真宝後集」は「清韓本」と称されてきたが、清韓は、「彭叔抄」を含む抄物の古活字版・初期整版の版行にも関与したことはほぼ確実であり、次期課題で詳細を明らかにする。
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Research Products
(2 results)