2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K13465
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
平子 達也 南山大学, 人文学部, 講師 (30758149)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 出雲方言 / 非中央方言 / 狭母音化 / アクセント / 歴史言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、年度前半は本務校の異動、年度後半はCOVID-19の影響があり、臨地調査を十分には行うことができなかったが、夏に行った臨地調査によって、従来、仁多方言でのみに存在するとされていた特殊な音韻変化が、横田方言の一部にも見られることが確認できたのは、一つの成果であった。 また、これまでの研究成果を整理し、出雲方言の歴史的な位置付けに関して、2件、招待講演を行った。出雲方言が非中央方言系の方言であることを、厳密な共時的な記述と精密な比較歴史言語学的考察に基づいて指摘した。さらに、出雲方言内部のアクセントの地理的変異の状況から、大社式アクセントと呼ばれる方言アクセントにおいて見られる2拍名詞4類と5類の対立が、見かけ上のものである可能性を指摘した。これらの成果を公刊すべく、論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初、行う計画であった調査が、先述の通り、様々な要因によって行えなかった。また、成果の公表という点でも、論文化が遅れている部分もあり、全体として、遅れている、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19の影響で、今年度も臨地調査はできないものと予想される。この際、本年度は、計画の最終年度であるということも踏まえ、これまでの研究成果をまとめ、公開することに注力したい。また、本研究計画を発展・継承した次年度以降の研究の基礎を構築するための、資料収集も行う。年度後半に、事態が好転し、調査が可能になれば、追加調査をすることもあり得るが、現状、その可能性は極めて低いものと考えている。 具体的には、出雲方言の歴史的位置付けに関する論文を2件、執筆することと、これまで収集した音声データなどを整理し、ウェブ上で公開できるような形で整備する。 また、本研究では、出雲方言の厳密な共時的記述と通時的考察によって、出雲方言が京都方言などの中央方言とは系統を異とする非中央系の方言であることを明らかにした。出雲方言を含めた非中央系の方言の記述は、日本列島の諸言語・諸方言を対象とした比較歴史言語学的研究にとって、極めて重要なものであるが、従来、その記述は十分ではなかった。文献資料に反映されたものも含め、どの方言を優先的に調査・研究を行うべきか、ということも含めて検討し、本研究を発展・継承する形で計画をしている次年度以降の調査・研究のための資料収集などを行う。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響によって、年度後半に予定していた調査にキャンセルが多数生じたため、次年度使用額が生じた。 今年度においてもCOVID-19の影響は続くものと考えられる。年度後半に事態が好転すれば、調査に赴くことも考え、ひとまず旅費も確保しておくが、基本的には、成果公表のための情報機器などの購入、論文英訳校閲代、図書購入費などに当てる計画である。
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Research Products
(8 results)