2020 Fiscal Year Annual Research Report
On the geographical variation of Izumo dialects
Project/Area Number |
17K13465
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
平子 達也 南山大学, 人文学部, 准教授 (30758149)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 出雲方言 / 日本祖語 / 2拍名詞4類と5類のアクセント / 狭母音化 / 出雲仁多方言 / 比較言語学 / 言語地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,島根県出雲諸方言の地理的変異について,その実態を明らかにするとともに,その歴史的な背景を明らかにすることにあった。私自身の度重なる異動と新型コロナウィルス感染症の影響により,必ずしも十分には調査・研究が行えなかったが,その中でも以下の2つの成果を残すことができた。 (1)大社式アクセントの歴史的位置付けについて 従来,出雲市大社町周辺の方言において,2拍名詞4類と5類のアクセントが区別される「大社式アクセント」の存在が指摘されてきた。大社町周辺方言を除けば,2拍名詞4類と5類のアクセントは,京都方言を中心とする中央方言とそれに地理的に連続する地域でのみ,その区別があるものとされており,そのため両類の区別が中央方言における二次的な改新の結果であるとする説もあった。その中で,大社式アクセントの存在は,両類の区別が祖語に遡ることを強く示唆するものとして注目されてきた。しかしながら,本研究において,出雲地域諸方言のアクセントを網羅的に調査した結果,大社式アクセントにおける2拍名詞4類と5類の区別は,実は言語変化の過程における見た目上のものに過ぎず,その区別は祖語に遡らない蓋然性が大きいことが明らかとなった(平子 2021)。本研究成果は,出雲地域諸方言アクセントの地理的変異を網羅的に調査した結果によるものであり,日本語アクセント史研究に重大な貢献をもたらすものである。 (2)出雲方言が「非中央方言」であることの指摘 従来,出雲方言を含めた本土諸方言は,日本語諸方言を対象とする比較言語学的研究に貢献することがないものとされてきた。しかし,本研究の結果,出雲方言内部の音変化を再建することによって,出雲方言が中央方言で起こったとされる音変化を経験していないことを明らかにし,その研究が日本語諸方言を対象とする比較言語学的研究に貢献し得ることを指摘した。
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