2018 Fiscal Year Research-status Report
近世後期江戸語から明治期東京語における第三者用法の体系的研究
Project/Area Number |
17K13466
|
Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
山田 里奈 東京福祉大学, 留学生教育センター, 特任講師 (30757331)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 日本語史 / 待遇表現 / 近世後期江戸語 / 明治期東京語 / 謙譲語 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、平成29年度で遅れが見られた、用例収集とデータ整理を進めるとともに、近世後期江戸語の使用についての考察を進め、明治期東京語への変化の様相や丁寧語とのつながりを明らかにすることを目指し、研究を進めた。具体的には、①近世後期江戸語における〈行く・来る〉の謙譲語についての考察結果を発表し、論文化すること、②明治期東京語の用例収集とデータ整理を行なうこと、③①の考察結果を踏まえ、明治期東京語における〈行く・来る〉の謙譲語の使用について考察を行なうことである。 ①の近世後期江戸語における〈行く・来る〉の謙譲語についての考察結果は、早稲田大学日本語学会前期研究発表会(7月)にて発表することができた。「うかがう」「あがる」「さんず」「まいる」「めえる」の五語を中心に取り上げ、各語の使用実態や各語の似た点と相違する点について記述し、「うかがう」や「あがる」が新しい謙譲語として用いられ始めた要因について指摘した。発表の際、様々な意見や指摘を受けることで、自身の考察方法や分類基準を再考するきっかけを得ることができた。この再考に時間を費やしてしまったが、必要な再考であったと思う。さらに、口頭発表の内容を「近世後期江戸語における〈行く・来る〉の謙譲語―「うかがう」「あがる」「さんず」「まいる」― 」(『早稲田日本語研究』28)にまとめた。 ②の明治期東京語の用例収集とデータ整理については、ほぼ完了した。ただし、用例の精査や写本の確認等、すべての作業が完了したとはいえないため、さらに進めていく必要がある。 ③の明治期東京語における〈行く・来る〉の謙譲語の使用についての考察は、内輪の口頭発表を行ない(2回)、様々な指摘を受けることができた。この指摘を踏まえて考察を深めることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
用例収集やデータ整理等、おおむね順調に進んでいる。ただし、データの整理を平成30年度中に終えることを目標としていたが、完了しなかった。また、明治期東京語における〈行く・来る〉の謙譲語の使用については、考察の観点や分類方法等、考えなくてはならない課題が残っている。 データの整理については、誤りのない研究を進めるにあたり不可欠な作業であるため、データの整理を進める時間を今まで以上に確保できるようつとめていく。考察については、用例に向き合いながら様々な観点から見ていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、第三者に対して使用される謙譲語と通常語の使用全体を見渡していくことを目的としていた。その第一歩として、〈行く・来る〉の謙譲語の使用についての考察を中心に進めてきた。研究を進めるうちに、多くの課題が見つかった。 今後は、〈行く・来る〉の敬語の体系という意味領域の枠組みを設けた考察に変更し、残っている通常語の使用(文末)の考察を行なっていく。
|
Causes of Carryover |
旅費として予定していた金額を使用しなかったことが大きな要因である。今後は計画通りに使用していく。翌年度は、考察の進度に合わせた参考文献(書籍の購入や論文の複写代)、学会への旅費等に使用していく予定である。
|