2019 Fiscal Year Research-status Report
地理的・歴史的変種の対照による行為指示表現の変化の研究
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17K13467
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
森 勇太 関西大学, 文学部, 准教授 (90709073)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 行為指示表現 / 連用形命令 / 命令形式 / 待遇表現 / 敬語 / 地域差 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は,以下の研究を実施した。 [1] 方言研究 西日本諸方言の命令表現体系の記述のための調査として,高知県高知市,山口県山口市,徳島県徳島市,香川県坂出市の方言の調査を実施することができた。また,研究成果を発表するものとして,広島県安芸方言の命令表現について,研究論文を発表した。また,西日本諸方言における連用形命令のバリエーションの形成過程について,さまざまな地点の変化をまとめ,日本方言研究会第109回研究発表会にて研究発表を行った。また,この研究発表の内容を研究論文として投稿した。いずれも,特に注目したのは動詞連用形による命令表現である「連用形命令」であるが,連用形命令の取り入れの過程は一様ではなく,各地のもともとの体系に合わせた形態で取り入れられていることを明らかにした。 [2] 文献研究 近世後期洒落本を対象として,行為指示表現の地域差を調査し,研究論文として発表した。遊女の客に対する運用という共通場面において,それぞれの地域でどのような行為指示表現の運用がなされているかを調査したところ,京・大坂では行為指示表現の運用が多様なのに対し,江戸は敬語を用いた形式に偏った固定的な運用が行われていた。また,尾張は京・大坂と江戸の中間的な様相を示していた。このことは,現代に通じる東西差がすでに生じていたこと,また,当時の尾張が地域敬語を持つ中で標準語の敬語を取り入れていく際に,標準語の敬語を固定的に用いる傾向にあることを示すと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画では,[1]方言研究と[2]文献研究で研究論文を1本ずつ執筆することとしていたが,すでにその論文は執筆が完了している。また,他にもそれぞれの研究に関する基礎的なデータの記述を行った論文が刊行できており,2019年度までに当初の計画以上に成果発表ができているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は論文発表によって得られた意見・コメントをもとにデータの確認・追加調査に努め,本研究課題のまとめを行っていきたい。
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