2020 Fiscal Year Research-status Report
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17K13469
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鴻野 知暁 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (30751515)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本語史 / 係り結び / コーパス / アノテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、国立国語研究所の「日本語歴史コーパス」に対して係り結びの情報をアノテーションし、その情報を形態論情報と組み合わせて上代から中世期における通時的な分析を行うものである。上代から中世の主な日本語資料に出現した係り結びの用例を、「日本語歴史コーパス」を用いて調査し、全ての時代に通用する係り結びのアノテーションの基準を検討し、データベースの整備を行った。本研究で作成したアノテーションデータはWeb上で公開する予定である。 本年度は、「日本語歴史コーパス」で公開されている平安時代編の『大鏡』(7万語)と鎌倉時代編の『とはずがたり』(6.5万語)のコーパスに対し、係り結びの情報を付与した。鎌倉時代の作品では、ニヤアラムから転じてできたヤラムという形が見られたため、この処理方法について検討を行った。 また、本年度は助動詞ナリと係り結びの関係について、以下の研究を行った。古代日本語において、終止形に接続するナリ(終止ナリ)は係助詞の結びとなるが、連体形に接続するナリ(連体ナリ)は結びとならないことが先行研究によって指摘されている。しかし、本研究課題で作成したデータベースで調査したところ、ナラム・ナルラムのような連体ナリの複合形式については、係助詞の結びとなる例が存在することが明らかになった。そこで、複合形式について、その取る構文のタイプを整理し、(1)「疑問詞~ナラム・ナルラム」、(2)「疑問詞+ノ・ガ~ナラム・ナルラム」、(3)「係助詞ヤ・カ~ナラム・ナルラム」といった構文で、文末の活用形がどうなっているかを検討し、連体ナリ単独の場合と、連体ナリの複合形式とで構文上のふるまいの一部が異なることを見た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していた全ての資料のアノテーションが完了したため、さらにデータを拡充し、平安時代の『大鏡』と鎌倉時代編の『とはずがたり』のアノテーションを加えることができた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の蔓延による行動制限のため、国立国語研究所の研究員との連携が取れず、データ公開のための作業を進めることができなかった。このため、研究期間の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
データ公開のためにユーザーインターフェイスを整備する。新型コロナウイルス感染症の蔓延によって行動が制限されることも想定されるが、Zoomなどを使用したオンライン会議を開き、国立国語研究所の研究員から意見を求めた上で作業を進めていく。また、作成したデータベースを活用し、研究論文の執筆を行う。
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Causes of Carryover |
作業計画に変更が生じ、データ公開のためにユーザーインターフェイスを整備する作業が必要である。この作業の従事者への謝金として充てる計画である。また、必要な消耗品について次年度に購入する。
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