2017 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Labeling and Parametric Variation in Syntax
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17K13475
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
後藤 亘 東洋大学, 経営学部, 准教授 (50638202)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Merge / Labeling / Lexicon |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度はChomsky (2015)の(1)が説明しようとしている空主語の特性に対して提案仮説(2)の観点からより簡潔な代替分析を与え、その分析を出発点としてあらゆる関連現象を考察した:(1) Tが弱い言語は非空主語言語になるが(例:英語)、Tが強い言語は空主語言語になる(例:イタリア語)。(2) Free Mergeの帰結として得られる主要部(H)の指定部(S)への併合(Merge H-to-S)は(<phi, phi>ラベルあるいは<Q, Q>ラベルの)ラベル決定(Labeling)に寄与することができる。Chomskyはとりわけイタリア語の空主語が関わる現象だけを扱っているが、本研究では空主語だけでなくパシュト語などの空目的語も射程に入れながら研究を進めた。また、ChomskyはA'移動のさらなる移動に関する言語間変異(例:that-trace効果)だけを扱っているが、本研究ではA'移動だけでなく、それに対応するA移動のさらなる移動に関する言語間変異やQuirky Subject構文に関する言語間変異も射程に入れながら研究を進めた。よって平成29年度は、Chomskyが(1)で捉えようとしている現象に加えて、(1)では捉えきれない関連現象も研究対象にし、提案仮説(2)の観点から統一的な分析を与えた。研究の成果は国内外の学会で発表し、1つの論文にまとめた、以下は参加した代表的な学会である。 【論文】Eliminating the Strong/Weak Parameter on T. Proceedings of GLOW in Asia XI, 57-71. 【発表】Notes on Search and Syntactic Visibility (日本英文学会第89回大会ワークショップ) 【発表】A Labeling-based Approach to Floating Numeral Classifiers in Korean and Japanese, J/K 25 【発表】空項現象から見る言語の普遍性と多様性(日本英語学会第35回大会ワークショップ)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究はMergeとLabelingというコア概念だけでどれだけ多くの言語間変異を説明することができるのかというプロジェクトである。Mergeは基本的に自由に適用されるというFree Merge仮説(Chomsky 2015)と言語間変異は基本的にLexiconおよびそこに蓄えられる語彙要素の違いに還元させられるというBorer-Chomsky Conjectureを最大限推し進めることによって、人間言語の普遍性と多様性の問題に対して、以下のような一定のクリアな見通しが得られた。 (1) 言語の普遍性=MergeとLabeling (2) 言語の多様性=Lexicon 本研究を実証的に進めていく上で実際に研究代表者が観察・分析対象とした言語データは英語、日本語、イタリア語に限られていたが、そこから得られた知見・着想はそれ以外の言語、例えば、ドイツ語(Andreas Blumel, University of Gottingenとの現在進行中の共同研究)や韓国語(Myung-Kwan Park, Dongguk UniversityとのJK25における共同発表 "A Labeling Approach to Floating Numeral Classifiers in Korean and Japanese")などにも拡張可能であるということがわかり、これは当初の計画以上の進展であった。 また、本研究を推し進めていく上で、Free MergeとLabelingに関わる上位概念としてDeterminacyという存在に気づき、Determinacy研究も射程に入れながら今後は研究を進めていく必要性が出てきた。これもまた、当初の計画以上の進展であり、今後のさらなる研究に繋がるものになっている。 したがって今後は、まずは当初の計画通りに本研究を進めると同時に、そこから可能になってきた共同研究ならびにDeterminacy研究も行いながら、当初の計画以上に研究を進め、一貫性及び継続性のある研究を通してさらなる成果を出して行きたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、前年度に得られた結果をさらに推し進め、(非)Wh移動言語の違いを司るメカニズムは何なのかという問題を実証的に検証することを目的としている。本研究では可視的な主要部が重要な働きをするため、主要部「か」が関わる日本語のWh疑問文とそのような主要部を欠く英語のWh疑問文を比較し、そこから観察される言語間変異に対して新たなLabeling分析を与えながら提案仮説(2)の妥当性の検証を行っていく。 またそれと同時に、Labeling分析から得られた知見に基づいて、Determinacy研究も進めていく。具体的には、Free Merge + Labelingアプローチで捉えられていた現象(例:that-trace effect等)はFree Merge + Determinacyアプローチでも捉えられることが明らかになりつつあるため、両アプローチの可能性を実証的に検証しながら、最適な言語デザインを追求していく予定である。 なお、Determinacy研究は極めて最先端の研究であり、直接的な先行研究(論文)がまだ存在していないため、国内外の学会で積極的に発表を行いながら、同時に論文投稿も行うことによって、当該研究の重要性をいち早く世界に広めて行きたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国際学会発表(NELS)への参加が不採択になったため。
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Research Products
(8 results)