2018 Fiscal Year Research-status Report
地域の母語支援者の教科学習支援への支援参加過程に関する研究
Project/Area Number |
17K13487
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
高梨 宏子 東海大学, 課程資格教育センター, 助教 (90748542)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地域の母語支援者 / 外国人児童生徒 / 教科学習支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
外国人児童生徒の教育において母語保持育成・教科学習の遅れなどの課題にこたえるべく外国人児童生徒の母語を活用した学習支援を実施していく必要がある。本研究ではこうした学習支援の中でも「地域の母語支援者」に注目する。研究の目的は、地域の母語支援者の支援参加過程を明らかにすることを通じて支援参加モデルを構築することである。 前年度に引き続き、平成30年度も神奈川県にある公立中学校における国際教室において、外国人生徒を対象とした母語を活用した教科学習支援を実施した。 毎回の支援後に地域の母語支援者が作成した学習支援記録を収集した。支援記録を質的に分析した結果、地域の母語支援者は継続的な参加によって、外国人生徒の母語力の捉え方の変容が見られた。また、教科の内容理解を深めるために、日本語支援との関連を考えながら支援をしていた。地域の母語支援者の多くは通訳支援などを経験していたものの、母語で教える経験は多くはない。そのため、初期の段階では、母語を正しく読めることに注目しているが、段階を経て教科内容理解を重視するようになっていった。 さらに、地域の母語支援者にインタビューを実施することができた。そこで語られた内容を質的に分析した。母語を活用した教科学習の取り組みの重要性を認識しており、その結果、支援を継続していることが分かった。支援者の参加動機の背景には、地域の支援者自身のこれまでの経験が影響している様子が見られた。外国人として日本で生活していたことや母親として日本で子育てしていたことなどが背景にある。また、母語を活用した教科学習では、通訳支援や日本語学習支援をしていた時の経験を活かして参加していた。他方で、自身の役割は通訳支援時とは異なると認識しており、地域の母語支援者には専門性があることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に加えて新たに収集された支援記録に分析を加えていく必要がある。また、地域の母語支援者を受け入れる学校教員や協働支援を行う日本語支援者へのインタビューを実施し、地域の母語支援者を取り巻く環境について検討する必要がある。そのことで、地域の母語支援者が学校で活躍するにはどのような手立てが必要であるかを検討することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き神奈川県内にある公立中学校における国際教室での母語を活用した教科学習支援を実施していく。その上で、以下の点について調査、分析を進め、成果をまとめる。 1.学校教員を対象とした半構造化インタビューを実施する。地域の母語支援者との協働的支援に対しての考え等を聞き取り、地域の母語支援者の参加への影響を分析する。 2.引き続き、支援記録の内容分析を実施し、地域の母語支援者による記述内容の特徴と傾向を明らかにする。支援における困難と解決のプロセスを質的に分析していく。 3.上記のデータ分析結果をもとに、総合的考察をする。
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Causes of Carryover |
「次年度使用額」が生じた理由として、まず、人件費・謝金が発生しなかったことがある。学校教員や日本語支援者へのインタビュー実施が遅れていることにより謝金、文字起こしの費用支出がなかった。また、研究結果の中間まとめが遅れたことにより、学会参加を見送った。そのため、旅費の使用が少なかった。 次年度は、遅れているインタビューの実施をする。研究結果の分析とまとめを行い、学会発表をする。
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