2020 Fiscal Year Research-status Report
共通語としての英語(ELF)使用実態を踏まえた教育実践に関する質的調査と教育提言
Project/Area Number |
17K13508
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Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
小中原 麻友 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (80580703)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 共通語としての英語 / 教育効果 / 言語意識 / 言語使用 / コミュニケーション方略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ELF使用実態を踏まえたインストラクション(INS)がもたらす長期的教育効果を主に学生の言語意識(意識調査)と実際の会話における言語使用(録音調査)に焦点を当てて解明し、グローバル人材に必要な英語コミュニケーション能力育成の為の具体的示唆を示すことを目的とする。R2はパンデミックの影響でデータ収集が著しく困難となったため、既存データの分析に注力した。可能な限りデータ収集も継続したが、感染症対策と留学生の確保が困難であったため、追跡調査の録音調査の実施は見送った。以下に各調査の方法と成果を述べる。 1. 意識調査:【方法】前期2、後期1クラスの専門科目の履修者を対象に、導入アンケート、中間と期末レポート、授業毎のコメントシートをデータとして収集。【成果】これまでの調査結果同様、学生の意識はINS通してネイティブらしさに固執するENL(母語としての英語)志向的なものから、英語の多様性や意思疎通を重要視するELF志向的なものへと変化する傾向があった。 2. 追跡調査:【方法】録音調査の実施は見送った。意識調査は新規協力者を募らず、継続協力者9名を対象にデータ収集(Google Docsでの日誌記入)を続行。【成果】パンデミックにより協力者の英語使用機会も減少、収集できたのは3名からの少量のデータのみだった。既存データの分析は、特に初年度からの協力者2名のデータ分析の深化を図った。分析の結果、協力者はELF志向的意識を強く持つ一方で、「文法的正しさ」については気に掛ける傾向が散見された。しかし協力者の「英語母語話者信仰」に対する問題意識は高く、かつ多様な英語に対して、その聞き取りの難しさに言及することはあっても、寛容性を示しており、この点を単なる「英語母語話者信仰」の表れと捉えることは適切でない。更なる調査が必要である。録音調査は文字起こしを推進。詳細分析は今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
R2は、新規の追跡調査協力者を募集する可能性は残しつつも、長期の既存協力者4名とR1の協力者6名の収集データの質的分析の深化に注力していくことを計画した。しかし、パンデミックの影響で、録音調査を中心にデータ収集が著しく困難となり、追跡調査の意識調査についても、協力者自身の英語使用機会が減ったことから、思うようにデータが集まらなかった。またパンデミックの影響による諸般の事情から、新規協力者を募ることも見送った。よってR2は、既に多くのデータが収集できており、かつデータ収集期間中にExpanding Circle(Kachru, 1988)に属するヨーロッパの国への留学を経験したという共通点のある、初年度からの協力者2名のデータ分析の深化に注力した。録音調査については、文字起こしは推進したが、詳細分析は今後の課題である。今後の研究の推進方策については後述するが、パンデミックの影響で研究期間を1年延長した点や前述の点を踏まえ、R2の研究計画はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
INSの長期的教育効果の質的検証を推進し、かつ最終年度として総括していくには、追跡調査データの分析を更に深化する必要がある。よって、研究期間の1年延長により最終年度となるR3は、既存データの質的分析の深化に注力していくと共に、初年度からの継続協力者2名、2年目以降からの継続協力者数名(データ収集に対して同意を得られる者の中から選択)を対象に、既存データの分析結果を踏まえたインタビュー(難しい場合はアンケート)による追加の意識調査の実施を検討する。夏までに既存意識調査データの最終的な分析を終え、夏期休暇中を目処に追加調査を実施する。既存データの分析に基づくインタビューとなるため、その形式は、半構造化面接法の採用を検討する。インタビューの焦点は、協力者の現在の英語観を探ると同時に、ELF志向的意識とENL志向的意識の相反する二つの意識がなぜ見られるのかという点となることが予想される。一方、録音調査については、パンデミックの現状を鑑み、更なるデータ収集は実施せず、既存データの分析に注力する。分析手法の会話分析は分析の焦点について事前に決めることはしないが、データを概観するに、英語以外の言語の使用箇所や隣接ペア(その拡張を含む)の分析などが考えられる。
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Causes of Carryover |
R2からの繰越額617,071円を研究推進および総括のために効率的に使用する。次年度使用額が生じた理由は、パンデミックの影響で録音調査ができなかったり、意識調査の収集データ量も思わしくなかったりしたため、研究協力者への謝金にあてる費用が極端に少額となったためである。研究の推進と総括のため、追加で実施予定の意識調査インタビュー(あるいはアンケート)への協力者に対する謝金や、録音調査データの文字起こし作業の業者への謝金にも充てたい。また、研究の深化を図るための文献調査のための費用と、分析結果から得られた知見をまとめ、国内外の学会や学術論文で積極的に公表するための必要経費にも充てたい。
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