2017 Fiscal Year Research-status Report
明示的指導の効果とメタ言語能力との関連に関する理論的・実証的研究
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17K13514
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Research Institution | Kanazawa Gakuin University |
Principal Investigator |
大滝 宏一 金沢学院大学, 文学部, 准教授 (50616042)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 明示的指導 / メタ言語能力 / 主語卓越性 / 目的語脱落 / 英語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、主に以下の二点について研究を進めた。 1.主語卓越性に関する明示的指導の効果の検証 日本語は話題が文頭に出てくることが多い「話題卓越言語」であるのに対して、英語は文頭に主語が現れる「主語卓越言語」であるため、日本語を母語とする英語学習者が英語を使用する際に、誤って主語ではなく話題を文頭に表してしまうという現象が観察されている。本研究では、大学1年生を対象に、英語の主語卓越性に関して明示的指導と暗示的指導を行い、指導の効果を検証した。実験参加者を明示的指導を受けるグループと暗示的指導を受けるグループの2つに分け、プレテストとポストテストを行い、指導の効果を比べたところ、明示的指導の方が暗示的指導に比べて指導の効果が高いことが示された。この結果は、習得に否定証拠が必要となる主語卓越性のような文法項目に関しては、明示的指導が効果的であることを示唆するものである。 2.目的語脱落の要因の検証 大学1年生を対象に強制選択課題を用いて実験を行い、目的語脱落の要因について検証した。これまでの研究では、目的語脱落は母語である日本語の転移の影響が大きいという主張がなされていたが、既に持っている自動詞・他動詞の区別に関する知識が結果に強く影響しているという問題が存在していたため、本研究では、新奇動詞を使用することによって、既に持っている動詞の知識が結果に影響しないように工夫した。実験の結果、目的語脱落に関しては、母語である日本語の影響は小さく、むしろ、言語運用の際に生じる認知的な負荷が大きいことが主な要因であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、主語卓越性に関する明示的指導の効果を大学1年生を対象に実験を行うことによって検証することができた。また、本来であれば平成30年度に実験を予定していた目的語脱落に関しても、予備的な調査ができたため、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に、主語卓越性に関する明示的指導の効果の検証と、目的語脱落の要因に関しての調査を行うことができたので、平成30年度は、本研究の主なテーマである、明示的指導の効果とメタ言語能力との関わりについて研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
本来であれば平成29年度に購入予定であった機器(実験・結果分析に使用するもの)の購入を見送ったため、約20万円分の次年度使用額が生じた。平成30年度に平成29年度購入予定であった機器を購入する予定である。
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