2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13519
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
松本 敦 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報工学研究室, 研究員 (20588462)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脳波 / 外国語能力 / 自然音声 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は脳波を用いた英語能力評価のための手法を確立するために英語音声聴取時の脳波を記録し,その脳波を解析することで英語能力が高い群と低い群でどのような違いがあるのかを検討した。脳波の解析に一般線形モデルを用いた解析を導入することで英語音声中に含まれる様々な要素に対する脳反応をモデル化し推定することが可能であった。本研究では音声に含まれる音素,そして単語に対する反応を検討した。実験参加者のデータは番号で管理し,個人情報,プライバシーの保護などに関しては十分に注意した。英語高能力者30名と低能力者30名の平均波形を検討したところ。高能力者では母音に対する音素と子音に対する音素に対する反応が異なっており,両者が分離されて処理されていることが明らかになった。それに対し,低能力者では分離が十分ではなかった。また,破裂音,摩擦音などの子音の発声種類に関する分類も高能力者では十分に行われていたが,低能力者では分類されていなかった。高能力者は英語音声に接する機会が多いため,音素レベルの処理で効率化が行われ,より正確な分類が可能になっている可能性を示唆している。また,単語に対する反応を見ると,単語呈示後200ms付近に現れる脳波の反応が高能力者群では低能力者群と比較して潜時が早く,そして振幅が大きいということが明らかになった。これは高能力者の方が単語に対して速さ,深く処理されていることを表している。音素に対する正確な処理がより総合的な処理である単語の処理の速さと深さに影響を与えている可能性が考えられる。これまでの脳波を用いた外国語能力に関する研究では自然な音声を用いた研究は存在せず,本研究の結果は脳波を用いた外国語能力評価に関しての研究に関して一石を投じる可能性がある新しい知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実験では自然音声に対する脳波反応を記録することで英語能力を評価する可能性を検討した。一般線形モデルを用いた解析を用いることで音声に含まれる様々な要素に対する脳反応を分離することに成功した。この解析を用いるのは初めての経験だったが,うまく高能力者と低能力者の違いを可視化することに成功した。このことはこの先の研究の進展に大きく寄与すると考えられる。ただし,今回の実験では実験に用いた刺激は十分な長さがあるとはいえず,推定された脳活動にどこまでの妥当性があるのか判断が難しい。そのため,十分な長さのある刺激に対する脳活動を計測し,検討することが望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究ではより長く,多くの要素を含む英語音声に対する脳反応を計測し,より細かく要素を分類した脳反応を検討することが求められる。例えば,単語の品詞を分類することで名詞や動詞など各品詞に対する反応を検討することが可能になるであろう。また,幅広い英語能力者の脳波を計測することで,英語能力の変化に対してどのように脳波が変化していくのかを検討していく。
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Causes of Carryover |
本年度の研究では実験参加者への謝礼や旅費などで他の研究費からの支出が可能になったため次年度の支出とした。次年度では研究成果発表などで予定よりも多くの額を使用する予定である。
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