2019 Fiscal Year Annual Research Report
Environmental Change and Plague Epidemics before and after the Black Death in the Middle East and North Africa
Project/Area Number |
17K13521
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
熊倉 和歌子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (80613570)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中世エジプト史 / マムルーク朝 / 黒死病 / ペスト / 疫病 / 農業生産 / 自然災害 / 環境史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中世の温暖期から小氷河期への移行期にあたる13世紀後半から16世紀半ばまでの中東・北アフリカ地域(アラブ圏)を対象として、疫病の流行と気候変動、社会経済の動向の相関関係とパターンを明らかにし、他地域と比較しながら、人間がおかれていた環境、および環境の変化が人間に与えた影響、そしてそれに対する人間のリアクションを追究し、同地域の固有性や他地域との共通点を探ることを目標とした。 研究期間中、年代記史料の叙述から、疫病の流行と気候変動や自然災害、物価高騰に関する記事を抽出し、データベースとしてまとめた。その一方で、文書史料に記された農業生産や灌漑に関する記録を収集し、これらの情報を手がかりにして、黒死病前後の経済活動の変化について検討した。この結果、ナイル流域においては、黒死病後に自然災害が頻発するようになり、それに少し遅れるようにして地方統治体制に変化が現れていたことがわかってきた。今後は、地方統治体制の変化の内容とねらいについて検討することを軸にして、引き続き環境との相関関係を追究していきたい。他方、目標に掲げていた地域間比較については、時間的な制約により、満足のいく作業ができず、課題が残った。 研究成果として、論文4本(うち1本は研究ノート)を発表することができた。この他、英文論集へ寄稿した論文が今年出版される予定である。また、2019年度からは独仏の研究者が主導する国際共同研究にも参加し、報告を行うなど、国際的な枠組みの中で研究を進める環境ができ、今後の研究の発展の可能性が見えた。
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Research Products
(12 results)