2018 Fiscal Year Research-status Report
大名家臣団における藩政運営能力の形成・蓄積に関する基礎的研究―久留里藩を事例に―
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17K13524
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小関 悠一郎 千葉大学, 教育学部, 准教授 (20636071)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 久留里藩 / 譜代藩 / 家臣団 / 藩政運営能力 / 民政 / 日本史 / 近世 / 政治文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①旧久留里藩士の諸家文書の解読と内容分析、②久留里藩領村方文書の現地史料調査を中心に研究を進め、③東京大学史料編纂所所蔵「森家諸留」42冊(久留里藩士森勝蔵編)の解読と分析も引き続き実施した。 ①については、田丸家文書の史料目録編集を終了し、君津市久留里城址資料館収蔵の粕谷家文書・杉浦家文書(ともに旧久留里藩士家)の調査および解読を実施した。成果の一端は、久留里城址資料館平成30年度企画展 明治150年記念展「久留里藩の記憶と象徴の行方」 関連講座において発表することができた(演題「幕末維新期の久留里藩と武士の学び」)。また、本研究で作成した史料目録や翻刻データの公表を目指した実務的作業も本年度から本格的に開始した。 ②では、江戸時代に黒田氏久留里藩領だった村方の文書を、現木更津市域および市原市域において現地調査し、史料写真の撮影および史料目録作成を実施した。これらの村方文書については、廻状留・訴願関係文書・大名黒田氏の養子縁組に関する史料等を本研究に資する史料として見出すことがことができた。 ③については、久留里藩研究の基本史料とされてきた明治期の編纂史料との関連について、前年度から引き続いて「森家諸留」と各編纂史料を相互に比較対照する作業を進め、それをも踏まえて、解読・翻刻データの作成を進めた。 以上の研究は、君津市久留里城址資料館・上総古文書の会(君津市 渡邉茂男代表)、木更津市・市原市の協力を得て実施し、成果物(データ)についても共有している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
久留里藩士田丸家文書の目録編集を終了することができた。また、同文書の解読の成果を一素材として、「江戸時代の「富国強兵」論と「民利」の思想」(『日本歴史』846、pp.39-56、2018年11月)を執筆し、成果の一端を発表することができた。 加えて、久留里城址資料館収蔵の旧久留里藩士家文書の調査および解読を実施した。 また、前年度に所在を把握した村方文書についても、現地調査を行って、史料写真の撮影および史料目録作成を実施することができた。 「森家諸留」の解読と分析についても、上総古文書の会の協力の下、前年度に未着手だった史料を中心に、引き続き順調に進めることができた。 以上を踏まえて、久留里城址資料館平成30年度企画展 明治150年記念展「久留里藩の記憶と象徴の行方」 関連講座において、「幕末維新期の久留里藩と武士の学び」と題した講演を行い、市民に研究成果の一端を公開することができた。 本研究で作成した史料目録や翻刻データの公表を目指した実務的作業も本年度から本格的に開始し、次年度につなげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度にあたる平成31年度は、次のような方策により研究を推進したい。 まず、民政と記録編纂を焦点とした、近世後期から幕末期にかけての久留里藩政の考察を引き続き行うとともに、久留里藩の「公議人」を務めた田丸謙蔵の残した史料を分析することで、維新期における久留里藩と新政府・諸藩との関係についても考察を行う。 また、黒田氏久留里藩領村方文書の調査で見出された関連史料として廻状留・訴願関係文書・大名黒田氏の養子縁組に関する史料等を参照することで久留里藩民政の考察に厚みを持たせたい。 さらに、東京大学史料編纂所所蔵「森家諸留」42冊の解読と分析の成果をとりまとめ、久留里藩研究の基礎史料の一層の充実を図る予定である。 最終年度は、これまでの諸成果をとりまとめて幕末維新期にかけての久留里藩の総合的なを行うとともに、研究成果を積極的に公開すべく、以上によって作成した諸データを載録した冊子の作成を進めたい。
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Causes of Carryover |
以下の理由により次年度の支出額を当初予定より多く確保する必要が生じたこと、および作業従事者の都合等により、人件費を想定より低く抑えたため。 使用計画としては、今回生じた次年度使用額を印刷・製本費に充てたい。これは、本研究で作成したデータ等を、今後の幅広い活用を期して、できる限り成果報告書に収録し、冊子体の形で可能な限り広く配付するためである。
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Research Products
(3 results)