2018 Fiscal Year Research-status Report
足利義満期武家政治史の研究 ―義満の権力確立過程の再検討を中心に―
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17K13526
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀川 康史 東京大学, 史料編纂所, 助教 (80760280)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 応永の乱 / 大内義弘 / 今川了俊 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)〈足利義満による有力大名の討伐とそれによる権力確立〉という当該期武家政治史の通説的枠組みの克服を目指し、その代表的な事例と評価されてきた応永の乱の研究を行った。ここでは九州情勢との関わりを重視する立場から乱の推移・背景を再検討し、(a)応永の乱の背景には室町幕府の九州政策の行き詰まりがあり、大内義弘が義満の施策・態度に不信感を募らせたことが乱の直接的な契機である、(b)応永の乱は義満権力確立の画期というよりはむしろ、その権力基盤の不安定さを露呈させた事件と位置づけるべきである、との見通しを得ることをできた。以上の成果は、2019年2月に大阪歴史学会中世史部会で口頭報告を行い、現在論文化を進めている。 (2)応永の乱と同様、足利義満の陰謀と評価されてきた今川了俊の九州探題解任の経緯・事情に関して、「今川了俊の京都召還」と題する論文を執筆した。本論文では、研究代表者の前稿「今川了俊の探題解任と九州情勢」(『史学雑誌』125編12号、2016年)で論じ残した応永2年の九州情勢を改めて具体的に論じるとともに、九州武士の動向から了俊の「京都召還」の実態が九州からの「敗走」であったとする新たな捉え方を提起した。本論文は『古文書研究』87号(2019年)に掲載予定である。 (3)史料調査を進めるなかで見出した史料をもとに、鎌倉初期の出雲守護に関する論文「鎌倉初期の出雲守護安達親長に関する一史料 ―河内金剛寺所蔵『梵網経古迹記巻下』紙背文書から―」を執筆した。本論文は『松江市史研究』10号(2019年)に掲載された。その他、本研究課題に関連する成果として、基盤研究(B)「中世後期の守護権力の構造に関する比較史料学的研究」(研究代表者川岡勉氏)の第2回研究会(2018年7月)にゲスト・スピーカーとして招かれ、「南北朝期の守護に関する諸論点」と題する研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は当初の予定通り永の乱に関する研究を論文化の直前まで進めることができた。昨年度から進めてきた今川了俊に関する論文も査読付き雑誌に投稿し、2019年度に掲載される予定である。また、本研究課題の目的とは直接関係しないが、史料調査を進めるなかで見出した史料をもとに、史料の少ない鎌倉初期の守護制度に関する論文を執筆することもできた。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度はまず(1)に記した口頭報告の論文化を進める。また、(1)の研究を進める中で、足利義満期の室町幕府と「遠国」の関係を総合的に把握する必要が新たに浮上したので、2019年度は視点を東日本にまで広げ、室町幕府と関東(鎌倉府)・東北(奥州探題等)の関係の分析を進める予定である。
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Research Products
(4 results)