2018 Fiscal Year Research-status Report
強訴消滅後の室町・戦国期興福寺訴訟ルートの基礎的研究
Project/Area Number |
17K13528
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
大薮 海 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (80748054)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 室町幕府 / 興福寺 / 強訴 / 南都伝奏 |
Outline of Annual Research Achievements |
①本年度も、強訴の消滅と大きく関係すると思われる南都伝奏について検討を進めた。南都伝奏は、室町期に南都伝奏を務めた万里小路時房の日記『建内記』中の記述に依拠して南北朝期の康暦年間(1379~1380)に成立したと考えられている。しかし、神木入洛を伴う強訴としては最後の強訴である康暦の強訴において、南都伝奏の活動は一切みられなかった(大薮海「室町幕府―権門寺院関係の転換点―康暦の強訴と朝廷・幕府―」、中島圭一編『十四世紀の歴史学―新たな時代への起点―』〈高志書院、2016年〉所収を参照)。そこでその康暦の強訴後の興福寺内の様子や興福寺・幕府間の交渉過程を検討し、南都伝奏の成立時期とその理由を明らかにすることを試みた。その結果、南都伝奏は康暦の強訴を幕府が強引に解決してしまったために起きた興福寺を二分する大騒動に関連して設置されたものである可能性が高いこと、また設置当初は南都伝奏だけではその任務を果たせず、康暦の強訴時に朝廷・幕府と興福寺の橋渡し役を務めた二条良基が引き続き両者の間を仲介していたことなどが新たに判明した。そして以上の内容を、大薮海「康暦の強訴終結後の混乱と南都伝奏の成立」(『お茶の水史学』第62号、2019年)として発表した。 ②『建内記』や『大乗院寺社雑事記』、『兼顕卿記』などから寺門雑掌や門跡雑掌の事例を収集した。また、院家雑掌の事例もわずかであるが収集することができた。 ③興福寺や南北朝・室町期の奈良に関する史料や論文を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強訴消滅後の南都伝奏や各雑掌の動向に関する史料の収集を順調に進めることができ、強訴消滅後に幕府と興福寺の関係が変化していく様子を知る手がかりを得られそうであるため。
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Strategy for Future Research Activity |
興福寺による訴訟事例が複数あり、関係する史料も豊富な室町中期と比較して、室町初期の訴訟の様子は史料に恵まれておらず分かりづらいのが課題である。しかし訴訟ルートが変容していく過程にあり検討が不可欠な時期であるので、史料の再解釈や視角の変更により、できるだけ解明することに努めたい。
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Causes of Carryover |
会計システム上の残額表示と実際の使用金額との間にズレが生じており、750円が未使用であることが会計システムの入力締切後に判明したため、翌年度分に繰り越し、物品費として使用することとした。
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