2019 Fiscal Year Annual Research Report
A basic study of the route of lawsuits used by Kofuku-ji in Muromachi and Sengoku period after the extinction of the violent lawsuit called Gouso.
Project/Area Number |
17K13528
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
大薮 海 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (80748054)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 室町幕府 / 朝廷 / 興福寺 / 強訴 / 南都伝奏 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①前年度までに検出した、南都伝奏が関係した朝廷・幕府と興福寺間の交渉のそれぞれについて、人物の動きや文書の遣り取りに注目してさらに検討を進めた。また、②南都伝奏が不在であった南北朝初期や、その活動が史料上追えなくなる戦国期にも検討の幅を広げ、両者の交渉ルートの変化を政治史の経過と合わせて理解しようと試みた。 ①については、近年の公武統一政権における室町幕府の位置付けの再考傾向(足利義満による朝廷権力に対する「介入」は、権力の奪取を目的としたものではなく補弼を主目的としたものであったという見方への変化)にならい、幕府による興福寺への「介入」という視点を相対化することも意図し、足利義満・義持期に行われた興福寺内の諸職補任への幕府(将軍)の関わりについて検討を行った。その結果、義満期には義満の恣意的な「介入」が確かに存在したが、義持期にはそれの是正を試みる傾向が確認できることから、公武関係と同様に幕府と興福寺との関係も再考が必要である旨の口頭報告を行った。一方、②については事例を多く集めることができず、研究成果としてまとめるに至っていないが、研究期間終了後も検討を進めることにより、改めて研究発表の機会を持ちたいと考えている。
以上、本年度までの研究により、南都伝奏設置以前の、朝廷・幕府・興福寺の三者の力関係が不確定であった時期の強訴における三者の役割が明らかとなり、南都伝奏設置直前に起きた強訴を検討素材とすることによって、南都伝奏の設置経緯を多少の推測を含みながらもはじめて明らかにすることができた。しかしながら、室町期とそれをさかのぼった南北朝期の検討にかたより、当初の計画にあった戦国期まで充分に検討を及ぼすことができなかった点や、南都伝奏以外の活動について新たな論点を見出すことができなかった点が課題として残ってしまったので、今後も検討を続けていきたいと考えている。
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