2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13536
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
宮川 麻紀 帝京大学, 文学部, 准教授 (60757079)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本古代史 / 交易 / 商人 / 市 / 津 / 交通 / ミヤケ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヤマト王権によるミヤケの設置や交通路・港湾施設などの開発について、現地で調査しながら研究する計画であったが、新型コロナウイルス感染流行にともない、その実施が困難になった。そのため、日本古代における交易のあり方全般についてや、商人の存在形態などについて、主に文献史料から検討しなおすこととした。 具体的には、古代の人々が何をどのような場所で売買していたのか、六国史や「正倉院文書」、『日本霊異記』、『今昔物語集』などの史料から検討した。これらの史料には、畿内を中心とする市や津といった交易拠点や、その周辺に広がる交通路、港湾施設などの様子が記されており、そこでどのような物が交易されているのかも具体的にわかる。そのため、売買される物資のデータを集め、整理するとともに、7世紀後半から9世紀前半までにおける市や津の変遷について検討した。具体例としては、近江国の粟津市や勢多津、山背国(山城国)の山崎津などである。これらの市・津は時代における変遷がありながらも、王宮や国府などと密接な関係を築きつつ、発展を遂げていったことが判明した。 また、古代には「商人」がいないとも言われるが、商行為を専門的におこなっていた者は確実にいたのであり、そうした人々の活動を考察しなおした。特に、平安京の市では女性の店舗経営者もいたことが、『宇津保物語』やいわゆる扇面古写経などから分かる。東アジア・東南アジアでは女性の商人も多く活躍していると言われてきたが、まさにそうした女性商人の姿を読み取ることができる。 さらに、今年度も12世紀の貴族である源俊房の日記『水左記』の校訂・注釈作業にあたる機会をいただいたので、平安時代の人々の生活や交通のあり方について検討することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、官大寺などの荘園の中から、王家のミヤケに遡及できるものがあることを検討し、王権によるミヤケやその周辺の交通の開発について考察する予定であった。しかし、これは現地調査を伴うものであり、新型コロナウイルス感染拡大と産休・育休のため、計画通りに研究を進めることが困難となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も現地調査が困難な状況が続くので、当初の研究計画を多少変更して進めることとする。主に文献や出土文字資料などから、日本古代の人々がどこでどのような物を売買していたのか、どのような階層の人々が交易活動に従事していたのか考察する。交易拠点や交通路、港湾施設の存在形態についても、引き続き検討していく。 また、正倉院文書や平安時代の貴族の日記、物語などの様々な史料を用いて、古代の人々の暮らしや移動の様子、物の売買のあり方などについて、より具体的に検討することとする。そうしたことを通して、古代の交易拠点や交易圏の形成についても、明らかにすることができると考えている。 こうしたテーマに加えて、商人の存在形態についても検討していく。ある程度は商人に関する史料を整理しているが、他にも新たな史料を用いたり、これまでとは異なる視点で検討することができないか、模索していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度は出産・育児休暇取得により研究を中断したため、次年度使用額が生じた。研究を再開させたのちに、研究書籍の購入などに使用する計画である。
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