2017 Fiscal Year Research-status Report
古琉球期琉球王国における仮名文字資料の表象性に関する研究
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17K13539
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Research Institution | Kyoto Seika University |
Principal Investigator |
矢野 美沙子 京都精華大学, 人文学部, 講師 (40706636)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 古琉球 / 仮名文 / 漢文 / 碑文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、古琉球期における国内資料を網羅的に分析し、資料作成に仮名文字が選択された背景と、仮名文字が古琉球の政治システムの中で表象するものについて、分析を行うことである。そのために、古琉球期国内資料を網羅的に分析し、仮名文字が使用されることの意味を明らかにすることを目指すことが平成29年度の課題であった。 資料収集のため、沖縄県那覇市・浦添市に複数回出張を行い、寺社・城跡における金石文の悉皆的収集作業を行った。収集した資料は、テキストデータベースの形で、現在整理を行っている。 仮名碑文には、辞令書と同様の「首里の御み事」という文言が確認できるほか、祝女によるみせぜる(古謡・神託)が仮名で引用される。作成者としては、三司官・奉行など、琉球人の名前があげられる。一方漢碑文は、禅僧の手になるものが多い。古琉球における禅僧は対日関係のブレインとして働くが、役人や祝女とは異なり、辞令書を用いて統制される存在ではなかった。また、琉球固有の名詞や単語を用いるのは仮名文の方であり、漢文では、漢語を選び直して用いている。加えて、仮名碑文を表面に、漢碑文を裏面に配置する碑文の存在も、古琉球期における仮名文と漢文の位置づけの違いを端的に象徴している。 以上のことから、対内的に国王権威を称揚する要素として、国王顕彰碑やおもろ・みせぜるがあったこと、こうした対内的な権威を示す資料に、仮名文字が用いられていた、との見通しを得た。この内容は、論文「古琉球期の仮名碑文に関する一考察」(『史観』177号、2017年9月)にまとめ、発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、沖縄県那覇市・浦添市において現地調査を行い、史料収集を実施した。また、現時点での調査結果に基づく見通しを論文として発表することができた。平成29年度は、おおむね当初の研究計画の通りに研究を実施できたと考えている。 一方で、現地調査の結果、古琉球期に作成された鐘銘(漢文)が比較的多く確認できることが明らかになった。いずれも宗教的な内容が中心であるが、漢文を用いて作成されている。研究計画の段階では、石碑の分析を研究の主軸とすることを考えていたが、鐘銘もいずれかの形で本研究の研究素材として組み込むことができないか、検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、前年度の調査結果に基づいて、収集資料に時代、使用している様式・文字、内容、作成主体等のデータを付しながら整理し、テキストデータベースにまとめる。追加調査が必要な場合は引き続き実施し、おもろも含め、できる限り詳細かつ広範なデータ採取を行いたい。また、古琉球期鐘銘をどのように分析材料として用いることができるか、周辺資料の収集もあわせて行う予定である。 作成したテキストデータベースを用いて、古琉球期における琉球国内文書における使用文字と、それらが表象する内容に相関関係が見られるか否か、分析を行っていく。研究成果は論文にまとめ、構築してきたデータベースと合わせて、紙媒体で発信(出版・雑誌投稿など)することを目指す。
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