2017 Fiscal Year Research-status Report
寺院組織と史料管理システム解明のための書誌学的研究-日本中世寺誌論の構築に基づく
Project/Area Number |
17K13542
|
Research Institution | Kanagawa prefectural Kanazawa bunko museum |
Principal Investigator |
貫井 裕恵 神奈川県立金沢文庫, その他部局等, 研究員(移行) (40782868)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 中世史 / 寺院史料 / 史料論 / 寺誌 / 歴史叙述 |
Outline of Annual Research Achievements |
寺院社会をはじめとする宗教は、日本の古代・中世において政治的・社会的に重要な位置を占めていたことは言を俟たない。本研究は、寺院に集積された膨大な史料を題材として、従来の寺院組織論および寺院史料論の成果をふまえ、近年の文庫研究および宗教テクストにおいて蓄積されてきた「目録」研究を寺誌の検討に生かし、寺院史料調査の成果を積極的に取り入れて、新たな寺院史像を再構築することを目的としている。 本年度は、東寺・東大寺・醍醐寺といった中世の有力権門寺院の寺院史料を素材として、寺院史料のなりたちと寺院内部の構造との関係を明らかにしていった。南北朝期に編纂された東寺寺誌『東宝記』や鎌倉中期に編纂された東大寺寺誌『東大寺続要録』を取り上げた。とくに寺院史料のうち寺誌に注目し、寺院の蔵する財物を仏・法・僧の区分をもって捉える思考の構造を、寺誌の編纂過程の解明のなかから析出した。ひとつの寺誌が生成されるに至る多くの寺院史料と、その大成としての寺誌を構造的に読み解くことで、寺院史料の集積と利用について究明した。 今後は、寺院史料それぞれが連関して編纂される営為が、真言宗寺院内外においてどのような意味を持つのかについて深めていきたい。中世東寺における寺誌を事例として、寺誌が寺院組織や寺院運営に担った役割について、これまで注目してきたところであるが、寺内にとどまらず、真言宗内あるいは社会全体に与えた影響について、宗教的・社会的な観点から捉え直していきたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進んでいるが、京都での原本調査回数は、当初想定していた回数を下回ったため、その点においてやや遅れている。その分、他箇所での必要な調査を実施できたが、今年度は京都での調査回数を増やして、翻刻等基礎作業に邁進したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
古代・中世の東寺において、さまざまな法会や記録の作成に従事してきた東寺執行家について、分析を進める。東寺執行家に関わる研究は、これまでまとまった翻刻がなく、このことが研究を後らせていると考えられる。本研究課題では、執行家に伝来した古文書・古記録を積極的に活用することで、東寺執行家の職務全般、とりわけ寺院史料の集積にもたらした影響を中心に明らかにしたい。そのうえで、これまでの東寺研究の中核を成してきた寺僧集団の研究を相対化していく。
|
Causes of Carryover |
次年度当初に必要とする機材の購入にあたり、購入予定物品の追加をしたため、予算が不足したことから、次年度の予算の振り込みがあり次第購入することとした。これにより繰り越しが生じた。次年度に当該物品を購入し、活用することにより、より詳細な調査が可能となり、研究への効果が期待できる。
|
Research Products
(2 results)