2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13544
|
Research Institution | Nara National Museum |
Principal Investigator |
斎木 涼子 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 室長 (90530634)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 密教 / 聖教 / 神仏習合 / 古代史 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に続き、真言宗の護国修法および護国思想を分析する上で重要な史料である『灌頂御願記』(1040年成立、仁海著)と、『真言付法纂要抄』(1060成立、仁海弟子・成尊著)について、記述内容の分析を進め、大きな成果を得ることができた。 『灌頂御願記』は、空海による唐からの密教請来、唐から続く護国の役割、そして日本における真言密教の朝廷・天皇への奉仕を列挙する内容である。この構成と執筆者仁海の活動から、11世紀はじめ頃、天台宗が国の仏教政策・外交において重用されており、それに比べて真言宗の存在感が薄くなっていたことに対する危機感が執筆背景にあったと考えられる。 『真言付法纂要抄』は、天竺から日本まで直系で伝授されてきた真言密教の歴史をたどり、また真言密教が他より優れる10の特徴を説明する。仁海の『灌頂御願記』の方針を基本的には受け継ぎながら、真言密教が天竺直系の正統仏教であると強調する。また、当時成立しつつあった本地垂迹説の原型ともいえる大日如来と天照大神の結びつきを示した点も特徴的である。その背景には、真言僧内部で受け継がれてきた天皇護持の思想や、成尊と結びつきが強かった後三条天皇の要請などが考えられる。 以上の研究成果を、論文として発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症緊急事態宣言により、史料調査のための出張等が中止・延期されたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
公的機関が所蔵する真言密教聖教のうち、従来内容研究が不十分なものの調査・研究を行う。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の流行およびそれにともなう緊急事態宣言等により、予定していた史料調査、出張等が中止となったため。
|
Research Products
(2 results)