2017 Fiscal Year Research-status Report
オスマン帝国における文化的選良層の社会生活と美意識の変遷についての社会史研究
Project/Area Number |
17K13550
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮下 遼 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (00736069)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | トルコ文学 / イスラーム研究 / 西アジア史 / 比較文学 / 東洋史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「オスマン帝国における文化的選良層の社会生活と美意識の変遷についての社会史研究」について、今年度は研究項目「Ⅰ.文化的選良層の社会身分とその質的変化」における①「文化的選良の社会身分の変容研究」について主に行い、「文化的選良」の社会身分(出身身分、官位、キャリアパターン等)と生活様式(金銭の獲得方法、個人的主従関係等)の実態を把握するため15世紀末から17世紀に編まれた14点の詩人列伝を主史料としつつ、選良たちの出身地、職業等の経歴を抽出する考察を行った。また、これと併せて、タンズィマート期についての同様の分析を行うための海外史料調査を実施し、この際には同研究項目の第二段階である②「文化的選良の人的社会結合と俸給・収入、メディアの変容研究」に関する調査を並行して行った。そのうえで年度末にはこれまでの研究成果を単著『多元性の都市イスタンブル:近世オスマン帝都の都市空間と詩人、庶民、異邦人』(大阪大学出版会)としてまとめ上梓した。また文芸翻訳論に関しても、共著として、藤井光, 沼野充義, 阿部公彦, 管啓次郎, 谷崎由依, 笠間直穂子, 西崎憲, 渋谷哲也, 阿部賢一, 宮下遼, 斎藤真理子, 温又柔, 小林エリカ, 戌井昭人『文芸翻訳入門:言葉を紡ぎ直す人たち、世界を紡ぎ直す言葉たち』フィルムアート, 2017を上梓した。さらにオスマン語古典詩の和訳に関しては、(講演会)宮下遼「外国語の詩を訳すということ:トルコ文学の場合」『大阪大学21世紀懐徳堂シンポジウム 第3回「大阪大学外国語学部がめざす外国学;言葉とともに、箕面とともに」』於箕面市メイプルホール, 2018年3月1日を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本来の予定では、①「文化的選良の社会身分の変容研究」と、②「文化的選良の人的社会結合と俸給・収入、メディアの変容研究研究項目」という2つの研究項目から成る本研究の第一段階「Ⅰ.文化的選良層の社会身分とその質的変化」の成果発表は、来年度に行う予定であったが、これを単著の学術書『多元性の都市イスタンブル:近世オスマン帝都の都市空間と詩人、庶民、異邦人』(大阪大学出版会)として上梓することが出来たことに加え、タンズィーマート期~現代までのイスタンブル文壇を考察対象とする上記②の研究項目についての考察結果についても、ある程度のまとめと出版予定の目途がついたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の大要は以下のとおりである。Ⅰ.「オスマン朝の文化的選良層の社会身分とその質的変化」①文化的選良の社会身分の変容研究/ ②文化的選良の人的社会結合と俸給・収入、メディアの変容研究 Ⅱ.「オスマン朝の文化的選良層における叙法の変遷」③トルコ古典詩における言語と叙法の変化/ ④文学的論題の変化:イスタンブルの事例を中心に 今後は上記のうちでも、Ⅰ②、Ⅱ③④の研究項目を主として扱うこととなるが、この際には古典史についてのテクスト分析(③)と、同時代散文史料/叙述史料(歴史学における)の分析を並行的に行っていくこととなるだろう。また、19世紀以降の西欧化期の詩歌の発展史については概略的なもの以外の先行研究に乏しいため、海外史料調査によって我が国からではアクセスの不可能な史料収集を行う予定である。いまのところの予定としては、上記Ⅱ④に関して、研究対象年代を15世紀~21世紀まで拡大した単著書を2018年度内、もしくは2019年度前半に出版する予定である。
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Causes of Carryover |
旅費の高騰により思った以上に旅費がかさんだため、本年度中に発表を予定していた英語論文のネイティヴチェック費用には足りない残額しか残らなかった。そのため、この残額を次年度に改めて上記費用に充当するため、繰越使用を行うこととした。
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Research Products
(3 results)