2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K13551
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
福永 善隆 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (00581539)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 官僚 / 人格的結合 / 前漢 / 郎官 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は本研究課題と関わる成果として、2017年7月22日に鹿児島大学において行われた第64回鹿大史学会大会にて、「前漢前半期における劉邦集団と人事制度の展開」と題する報告を行った。本報告は劉邦集団における人格的結合が世代をこえてどのように再生産されていったのかという点を問題にし、前漢前半期の人事制度において大きな役割を果たす郎官と察挙が劉邦と劉邦集団との関係を再確認し、その人格的結合を再生産する装置として機能していたことを述べた。本報告の一部は2018年3月に刊行された『鹿大史学』第64・65号に、「前漢前半期、劉邦集団における人格的結合の形成」と題する論考として上梓した。本論考は郎官が劉邦集団における人格的結合を再生産する装置として重要な位置づけを担っていたことを中心として分析した。具体的には、劉邦集団が郎官として優先的に、「高祖の衣冠」が月に一回高廟に「出游」する「游衣冠」の祭祀を通じて、高廟と直接つながる空間としての宮中への宿衛が認められることは、自身と「高皇帝」との関係を再確認することで、自身を劉邦集団のなかに位置づけ、その連帯性を再生産することにつながったと結論づけた。 また、2017年8月に中華人民共和国北京大学において行われた第十届中国中古史青年学者聯誼会に出席し、黄楨氏(四川大学歴史学院)の「官制撰述在漢末的興起」と題する報告に対して、官僚機構の構造に関わる理念・法制などに関する視点から議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り前漢前半期の人格的結合について、特に劉邦集団に着目して研究を進めている。その一端は研究実績の概要の欄に記した鹿大史学会の大会において、特に皇帝の宿衛である郎官の機能を中心として報告したが、その後、その成果を論文としてまとめるなかで、都城に関する先行研究及び史料を再検討していくなかで、郎官の宿衛する空間としての宮中が宗廟祭祀と深く関わる場所であったことに気づき、その視点を取り入れ、論考にまとめることができた。この視点は今後本研究を前漢だけではなく、戦国期からのつながりを考える上で重要な視点となると考えている。 以上により、本年度の研究はおおむね順調に進展していると評価するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に明らかになった劉邦集団内部で人格的結合が再生産される過程に関する成果を利用して、本年度は劉邦集団とそれ以外の官僚との関係を分析する。近年、前漢前半期の人事制度の特徴として、劉邦集団のネットワークを利用しつつ、人材を取り込む制度としての側面が強調されている。そこで、この人事制度に着目し、劉邦集団内部において「人格的結合」が再生産される過程をさらに解明するとともに、その運用によって、劉邦集団内部の「人格的結合」がいかに変容していくのか、解明する。 また、前年度郎官の宿衛する空間に着目したように、皇帝との空間的な距離の問題が皇帝と官僚たちとの「人格的結合」の形成に関わっていると考えられる。よって、本年度は中華人民共和国西安にて未央宮跡・皇帝陵などの現地調査を行いたい。
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Research Products
(2 results)