2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K13551
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
福永 善隆 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (00581539)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 劉邦集団 / 前漢 / 人格的結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は本研究課題と関わる成果として、2018年4月21日(土)に福岡大学において行われた第64回東洋史学研究会にて、「前漢劉邦集団の人的結合と郎官」と題する報告を行った。本報告は郎官と察挙が劉邦と劉邦集団との関係を再確認し、その人格的結合を再生産する装置として機能していたことを明らかとした前年度の成果を踏まえて、それが劉邦集団が拡大していくなかでで外部の人間をその集団に取り込んでいったことと関連する見通しを示した。 また、2019年3月に刊行された『鹿児島大学法文学部紀要人文学科論集』第86号に、「漢初、劉邦集団の展開と構造」と題する論考を上梓した。本論考は『史記』巻一八 高祖功臣侯者年表などにみえる高祖功臣位次について、劉邦集団内部の評価が反映されたものとして捉え、そこから劉邦集団の内部構造がその成長過程と密接に関連するものであることを明らかにした。そして、劉邦集団は一つの集団として強い求心性と表裏一体の排他性を有する一方で、その外部の者を「天下を共にする」体制の担い手としてその外延に加えていく開放性も有していると結論づけた。 さら、2019年3月に刊行された『名古屋大学東洋史研究報告』第四三号では「柴田昇著『漢帝国成立前史─秦末反乱と楚漢戦争─』」と題する書評を発表した。この前漢成立に関する柴田氏の著書に対する書評のなかで本研究の課題である劉邦集団との関係の視点から今後解明すべき点について私見を述べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度につづいて、当初の計画通り前漢前半期の人格的結合について、特に劉邦集団に着目して研究を進めている。昨年度は上の概要欄に記した柴田昇氏の著書の書評において劉邦集団研究について報告者の問題関心に基づき指摘を行ったが、その執筆を準備するなかで当該研究について考えをすすめることができた。また、『人文学科論集』第八六号の論文では上で述べたように、劉邦集団が外部の者を取りこんで拡大していく論理まで考えを進めることができた。この点は本研究の課題である人格的結合の追究にとって、重要な視点となりうる。 以上より、本年度の研究はおおむね順調に進展していると評価するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に明らかになった劉邦集団が外部の者を取り込んでいくことが劉邦集団における人格的結合の再生産にどのような影響を与えたのか、追究する。また、人格的結合を考える上では、劉邦集団の成員とその外部の者がどのようにネットワークを構成していたのか追究しなければならないと考える。以上のような考えに基づき、前漢王朝成立以前、劉邦集団が拡大・成長していく過程でどのような手続きを経て外部の者が取り込まれていったのか、それが前漢王朝の制度のなかでどのような形をとってその痕跡をとどめているのか、追究する。
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