2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K13551
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
福永 善隆 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (00581539)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 劉邦集団 / 人格的結合 / 察挙 / 官制秩序 / 前漢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は秦漢の皇帝支配体制・国家体制の変化について「人格的結合」の展開と関連させながら解明しようとするものであるが、本年度の課題は劉邦集団の外延に存在する官僚群がどのように劉邦集団と「人格的結合」を形成し、そこに取り込まれていくのかという点を解明することであった。 本年度の研究成果として、2019年度九州史学会大会東洋史部会(2019年12月15日、於九州大学)・中国古代史像再構築のための基礎的研究班第2回研究会(2020年2月15日、於京都大学人文科学研究所)において、それぞれ「前漢前半期における察挙の性格 ―劉邦集団の人格的結合形成の観点から―」・「前漢前半期における劉邦集団と察挙」と題する報告を行った。 この二回の報告は、前漢前半期の官僚機構に広範に見られる、前漢創業の功臣のように高祖劉邦と直接パーソナルな関係を持たないが、高祖劉邦を権威とする官僚群がどのように形成されていくのかという点と関連して、彼らが劉邦集団に取り込まれていく過程について、察挙をもとに追究したものである。周知のように、察挙は「公卿」が「士」を「大夫」に推薦するという形式を通して人材を登用する制度であるが、当該期における「士」・「大夫」という呼称を追究すると、そこに劉邦集団に外部の人材を加えていくという構造との関連性が見られること、彼らは対策を通して、高祖劉邦とのパーソナルな関係を擬制的に構築し、劉邦集団に取り込まれていったことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「人格的結合」の実態が劉邦集団が外部の人材を取り込むことでどのように変質していくのか追究することが当初の計画の一つであったが、外部の人材が劉邦集団にどのように取り込まれていくのか、そして彼らが劉邦集団とどのような関係を築いていくのかという点が解明できたことはそれと関わる大きな成果である。本研究の総括として、2月末に東北大学で行われる「東アジアの統治集団と結合原理」ワークショップに出席し成果報告を行う予定であったが、コロナウィルスの拡大により中止となってしまった。ただし、当初の計画はほぼ実施しており、また、その成果は次年度以降順次論文として公刊していく予定である。よって、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2月に京都大学人文科学研究所で行われた「中国古代史像再構築のための基礎的研究班第2回研究会」において劉邦集団との関連から察挙の形成を追究したが、その際行われた質疑応答を通して、文帝の動きも改めて分析しなければならないと痛感した。来年度はこの点について文帝期の政治状況を踏まえながら研究を進めていく。それにより劉邦集団の集団性について、より明確に把握できると考えている。さらに、本年度の成果を順次論文化していきたい。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの拡大のため、当初参加予定であった「東アジアの統治集団と結合原理」ワークショップ (2020年2月29日、於東北大学)が急遽中止となった。年度末であり、代替の予算計画の見通しがたたなかったため、研究期間延長を申請した。次年度は研究会へ出席するための旅費、関係書籍を購入するための物品費に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)