2019 Fiscal Year Annual Research Report
Modern history of Tibetan foreign policy: A study of the political status and territorial issues in Tibet
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17K13552
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小林 亮介 九州大学, 比較社会文化研究院, 講師 (50730678)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | チベット / ダライラマ13世 / イギリス / アメリカ / 日本 / 清 / 外交 / 辛亥革命 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,チベットが近代国際社会への参入を試みた20世紀初頭の外交をとりあげ,チベットの政治的地位と領域の確立に向けた模索の経緯を,高い史料価値を持ちながらも従来十分に利用されてこなかったチベット語外交史料を用いて明らかにし,これまで未開拓であったチベット外交史研究の基礎を構築することを目的とした。イギリスのヤングハズバンド武装使節団のチベット侵攻(1904年)にともなうダライ・ラマ13世の外モンゴル・青海・中国内地移動を契機とした、13世と列強諸国との接触・関係構築経緯の解明を目指した。ダライ・ラマ13世は日露戦争以降、ロシアのみならず、北京の日本公使館・アメリカ公使館などと積極的に連絡を取り情報収集につとめ、対イギリス関係及び対清関係に関する助言と斡旋を求めたことを指摘し、辛亥革命前後の政治変動の中で自主独立を希求したダライ・ラマ13世の外交の基礎が作り上げられていったことを明らかにした。これまで、ダライ・ラマ政権の対外関係については英国・ロシア・清など大国による政治外交の文脈において語られることが多かった。しかし本研究は、これらに加えて日本・アメリカなどとの関係に焦点を当てるとともに、ダライ・ラマ政権側から各国に送付された書簡の比較検討を行うことにより、ダライ・ラマが、「チベット仏教圏」を超えて国際社会と向き合い自己意識を確立していったこと、そして、チベット国家に対する国際社会からの承認の不在という、20世紀前半のチベット政治外交史を貫く構図がこの時期に形成されていったことを明確に示した。
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Remarks |
フランス国立科学アカデミーがEuropean Research Councilからの助成金を受けつつ始動したチベット軍事史の国際共同研究プロジェクトに参加しており、本科研の研究テーマと密接に関わるトピックについて研究を行い、国際学会・国際シンポジウムへの参加のほか、論文集などに寄稿をしている。
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