2020 Fiscal Year Research-status Report
15世紀東方キリスト教諸教会の連携と東西教会合同運動への反応に関する研究
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17K13554
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Research Institution | Kawamura Gakuen Woman's University |
Principal Investigator |
辻 明日香 川村学園女子大学, 文学部, 准教授 (60549509)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中東 / 東方キリスト教 / ビザンツ / 十字軍 / コプト / 異文化交流 / エルサレム |
Outline of Annual Research Achievements |
15 世紀、ヨーロッパにおいて東西教会合同運動が盛り上がっていた頃、中東においても、反カルケドン派の東方キリスト教諸教会は互いの連携を強化し、カトリック教会による呼びかけにも積極的に対応していた。本研究は、迫害やペストの影響により弱体化しながらも、中東各地の東方キリスト教諸教会が互助しあうことで生き残っていった様相を、コプト教会を中心に研究する。 2020年度も引き続き、文献収集や史料の読解につとめ、①コプトと十字軍諸勢力との交流、②エルサレムのビザンツ教会の活動を中心に分析を行った。昨年度に続き、とりわけ、13-15世紀に形成された、キプロス島におけるコプト教会のコミュニティーに注目した。このコミュニティーの形成にはコプト教会と十字軍国家との良好な関係が寄与していたと思われるが、謎が多い。飢饉によるエジプトからシリア方面への移住や、キプロスに関する同時代史料からこの問題を検討した。また、エルサレムとその周辺におけるビザンツ教会の活動について分析をした。エルサレム周辺に隠遁するビザンツ系の修道士と、ラテン教会やコプト教会などの修道士らとの交流に注目している。東方諸教会間、ラテン教会と東方教会、という単純な図式にあてはまらない相互交流の姿が示唆される。 これらの内容は本来は2020年7月に開催される予定であった国際コプト学学会、アラビア語キリスト教学会にて報告するはずであった。両学会とも2021年に延期になってしまったため、内容を深化させるべく研究を続けていたが、年度末に両学会とも2022年に再延期となってしまった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来は2020年7月に開催される予定であった国際コプト学学会とアラビア語キリスト教学会にて報告することが、本研究の重要な成果の1つであるはずであった。両学会とも2021年に延期ののち、2022年に再延期となってしまった。これにより、研究の報告、そして論文として投稿のプロセスに遅れが生じてしまい、2020年度としての成果を出すことができなかった。 また、2020年度はフランスのロックダウンなどにより海外からの書籍が手元に届くまで想定の数倍の時間がかかり、国内の大学図書館も外部利用ができないなど、必要な文献を入手するまでに時間のロスが大きかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はアラビア語キリスト教学会のパネルの報告者たちと連絡を取り合いながら、新型コロナウィルス流行下にて叶わない、国際学会報告やシンポジウム開催とは別の形での成果発表の場を模索していきたい。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定された国際学会2件が延期になり、国内学会もオンライン開催となったため、旅費を使用することができなかった。国際学会は2022年度に延期になったため、本科研の再延長手続きを許可いただけたらとてもありがたい。新型コロナウィルス流行下、部外者の利用を認めない大学図書館が多く資料の閲覧に苦労したため、旅費に使えない分の予算を資料購入費にあてることも検討したい。
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