2018 Fiscal Year Research-status Report
Church Law and Historiography in Late Antiquity
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17K13556
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 創 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50647906)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 歴史叙述 / 教会史 / ローマ帝国 / キリスト教 / 修辞学 / カノン法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、古代末期教会史、教会法に関する調査の途中経過について、国際シンポジウムや国内学会で報告し、教会の歴史・規定が長期的なスパンで見た際にいかなる形で伝承され、記憶されていたのかについて分析を進めた。また、Codex Veronensis LXに収録されているカルケドン公会議規定を中心に、ラテン語テキストの分析を深め、公会議の開かれた同時代的文脈と、それを引き継いだ後代の文脈で同じ規定がどのように異なって見えるかを考察した。 研究報告としては、2018年9月に名古屋大学で開かれたThe Fourth Euro-Japanese Colloquium on the Ancient Mediterranean Worldにおいて、'Transmission of Council Documents: A Case of the Fourth-Century Antiochene Church'と題した報告を行い、教会の歴史・伝承を時代に応じてどのように受け止めるかについて一つのモデルを提示した。また、同年11月に東北大学で開かれた西洋史研究会大会では、共通論題において、「教会史の系譜:ローマ帝政後期における歴史叙述の伝統と変容」と題した報告を行った。その中でジャンルとしての「教会史」について論じ、教会史という作品群が時代に応じてどのような変遷をたどったかをスケッチするとともに、それぞれの時代ごとで発表の目的がどこに置かれていたのかを具体事例をもとにして議論した。 また、これと並行して、歴史叙述に深く関連する修辞学に関連したリバニオス『書簡集2』の翻訳が京都大学学術出版会から刊行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
古代末期の教会史作品について、ギリシア語で残されている諸作品に加え、シリア語で残されたものも含めて、検討することができ、歴史叙述の伝統に関する大きな枠組みについて、理解を深めることができたとともに、論点となりうる研究史上の問題点も新たに発見することができた。また、教会規定についても、Codex Veronensis LXのテキストに沈潜して、写字上の疑問点や、構成上の特徴などを見出すことができ、写本を実験する前の予備的な準備を整えることができた。このため、研究状は収穫の大きかった一年と自己評価している。その一方で諸般の事情のため、二年次に遂行する予定であった写本調査に赴くことができなかったため、「おおむね順調」という評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
前項で述べたように、写本の実地調査で実施できなかった部分はあるが、当初計画で三年次に遂行する予定であった写本調査と合わせて、その不足を補う予定である。これは、調査先がいずれもイタリア国内であり、予算についても調整をしたため、十分に対応可能と考えている。写本の調査については、さらにアレクサンドリアのアタナシオスの著作についての理解を深め、Codex Veronensis LXを、教会史のみならず、教父伝承の中で理解することを深めていく予定である。
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Causes of Carryover |
家庭内の事情のため、二年次に予定していたイタリアへの写本調査渡航が実現できなかった。このため、三年次の写本調査で渡欧する際に、二年次に予定していた写本調査も合わせて実施する予定である。
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[Book] 書簡集2019
Author(s)
リバニオス、田中 創
Total Pages
676
Publisher
京都大学学術出版会
ISBN
9784814001736