2020 Fiscal Year Research-status Report
Church Law and Historiography in Late Antiquity
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17K13556
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 創 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50647906)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 古代ローマ / 教会法 / 初期ビザンツ / 古代末期 / ローマ皇帝 / 都市 / 歴史叙述 / ローマ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまでの研究成果を受けて、古代から中世初期にかけての歴史叙述、キリスト教会のローマ帝国社会への浸透に関わる論考や概説を執筆・発表することが中心となった。概説的なものとしては、2020年度4月に出版された、金澤周作(監修)『論点・西洋史学』(ミネルヴァ書房)における古代ローマ法の研究動向紹介、東京大学教養学部歴史学部会『東大連続講義 歴史学の思考法』(岩波書店)における西洋古代における暦と歴史叙述に関するものが挙げられる。また、ローマ帝政後期の通時的な帝国史を新都コンスタンティノープルに着目しながら描いた、単著『ローマ史再考:なぜ「首都」コンスタンティノープルが生まれたのか』(NHK出版)が出版された。ここではローマ帝国の政治スタイルの変化とそれに伴う皇帝イメージの変容、皇帝権と教会会議の関わり、それに伴う歴史伝承の利用や歴史視点の変化などを描き出した。 これとは別に、ローマ帝政後期において、多くの教会会議における決定が集成として継承されていく過程を検証した。その分析から、5世紀前半までは最初の「公会議」であったニカイア教会会議の歴史的記憶に接続させ、個々の教会会議の分別は避ける傾向があったのに対し、5世紀半ばから6世紀にかけては教会会議の開催地や時期などを明示して、規範として確立していくという変化を見出した。その背景にある思潮なども含めてまとめた英語論考は近日中に出版される予定である。また、帝政後期に編纂され、西ヨーロッパやビザンツ帝国に引き継がれることになったローマ法史料に関しても翻訳原稿を著した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果を反映した原稿執筆と出版は比較的順調に進み、多くの研究成果を発表できたため、おおむね順調と評価できる。その一方で、今年度は新型コロナウイルスの蔓延という予期せぬ事態への対応に追われたこともあり、教会法史料に関連する成果発表に充分に力を注ぐことができなかった。しかし、これについてもラテン語テキストの最終調整などを進めることができ、一定の進捗を見ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ローマ帝政期の教会法に関する伝承過程は極めて複雑であり、教会規定集成の編纂に関連しても、特に4世紀から6世紀という形成初期に関わる時代背景について対象を絞り、歴史叙述との関連をまとめていく。データの編集方法・整理方法についてもこの時代を基盤としたものを構築することを目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、新型コロナウイルスの影響によって、海外書店からの書籍購入が思うように進まなかったこと、とりわけ到着までの時期の不確定さが大きかったことが原因である。今年度、研究のとりまとめの上で必要な書籍の購入に充てて残額を執行する予定である。
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