2017 Fiscal Year Research-status Report
1950年代西ドイツにおけるキリスト教民主同盟の社会政策-その理念と社会像
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17K13557
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
芦部 彰 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (00772667)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 西洋史 / 西ドイツ / 家族政策 / 住宅政策 / カトリシズム / CDU |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、住宅政策と家族政策にまたがって見出すことができるキリスト教民主同盟(CDU)の社会政策の理念に迫ることを目的とするが、初年度である本年度は、まず家族政策についてドイツで史料調査を行った。この史料調査では、アデナウアー財団文書館(Archiv fuer Christlich-Demokratische Politik)に所蔵されている、初代の連邦家族大臣を務めたカトリック政治家フランツ-ヨーゼフ・ヴュルメリンクの個人文書を調査するとともに、ケルン大司教座付属図書館(Erzbischoefliche Dioezesan- und Dombibliothek)で、カトリック社会教義の理論家ヨーゼフ・ヘフナーの同時代の著作について調査を行い、1953年に連邦家族省が設置された際に関心を集めた、多子家族を想定した、家族の負担調整をめぐる議論や、結婚制度の保護に関して史料を収集した。 また住宅に関しては、CDUの住宅政策の特徴を明らかにするため、1950 年代半ば以降、CDUの政策に対抗する方向性で進められた、社会民主党(SPD)と労働組合の下で進められた住宅建設の実践について先行研究の検討を行い、20年代のフランクフルトで住宅建設を主導したモダニズム建築の指導的建築家エルンスト・マイが50年代後半に関わったブレーメンのノイエ・ファー団地とその関連する団地を対照事例に選定した。 さらに、次年度以降の基礎固めとして、本研究課題が扱う1950年代から60年代の西ドイツ社会の特徴と、その後70年代以降の西ドイツ社会における変化についての研究動向を整理した。1957年頃から1973年頃までを「長い60年代」と呼んで、西ドイツ社会の転換期ととらえる研究を中心に研究状況を検討し、その成果は査読誌に論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家族政策に関するドイツでの史料調査、CDUの住宅政策の特徴を明らかにする対照事例の選定といった点で、基本的に研究計画に沿った研究を実施できた。 また、西ドイツ社会について、本研究課題が直接の対象とする1950、60年代に加え、70年代以降も含めた西ドイツ社会史研究の研究動向の整理を行えた点では、計画以上の進展もあった。 他方で、ドイツでの史料調査の際に、コブレンツ連邦文書館で連邦家族省の顧問会議の史料についても調査する予定であったが、史料状況が想定と異なり、予定していた史料調査を行えず、研究計画に遅れが生じた。 プラス面とマイナス面を考慮すると、全体としては、おおむね研究計画にそった進捗状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画では、連邦家族省の顧問に名を連ねた人口政策学者をCDUの家族政策の特徴を明らかにする比較の対象としているが、次年度には、こうした人口政策学者が同時代に発表した文献の調査と収集に着手するとともに、これを通じて本年度行った史料調査で収集したカトリック政治家の個人文書の分析を深める。 これと関連して、連邦家族省の顧問会議について先行研究を精査し、本年度実行できなかったコブレンツ連邦文書館での史料調査を行う。 住宅については、ブレーメンのノイエ・ファー団地を中心に、50年代後半から60年代にSPDと労働組合が進めた住宅団地建設の背景にある住宅改革の理念の考察に取り組み、それを通じて、対抗関係にあったCDUの住宅政策の特徴を明確にする。
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Causes of Carryover |
コブレンツ連邦文書館での連邦家族省・顧問会議の史料状況が想定と異なり、同文書館での史料調査を行えず、史料調査にともなって必要になる史料の複写費など関連する分が未使用になったため、次年度使用額が生じた。 次年度、本年度に予定していたコブレンツ連邦文書館での史料調査を行い、その際に次年度請求分と合わせて使用する。
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