2019 Fiscal Year Research-status Report
後期ローマ帝国時代における世界認識の構造にかんする研究
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17K13561
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
南雲 泰輔 山口大学, 人文学部, 講師 (70735901)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 後期ローマ帝国 / ポイティンガー図 / アントニヌス旅程表 / 地理的認識 / 世界観 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,第一に,前年度に引き続き,収集済み史資料の整理検討および研究成果を学術雑誌へ投稿するための原稿化作業をそれぞれ進めた。これは今後も推進する予定である。第二に,当初の計画に沿って,前年度に実施した『ポイティンガー図』と『アントニヌス旅程表』の比較研究の成果の一部を,「ポイティンガー図とアントニヌス旅程表:後期ローマ帝国時代における地理的情報の継受の態様」として,第18回古代史研究会大会(2019年12月22日,於京都大学)において口頭で報告を行なった。第三に,本研究の対象とする時代の理解にかんする近時の学界動向について,時代区分論の観点からまとめた論文「西洋古代史の時代区分と「古代末期」概念の新展開」を,『思想』1149(2020年1月号「時代区分論」)(岩波書店,2020年1月5日刊行)に発表した。第四に,ローマ帝国時代における地理的認識・世界観について,地理的携帯型日時計という興味深い遺物に着眼し考察した研究文献R. Talbert, Roman Portable Sundials: The Empire in Your Hand (Oxford, 2017)の書評を『西洋古代史研究』19(京都大学大学院文学研究科,2019年12月18日刊行)に,また,背景としてのローマ帝国に対する視点の相対化を促す研究文献E. Dench, Empire and Political Cultures in the Roman World (Cambridge, 2018)の書評を『西洋古典学研究』68(日本西洋古典学会,2020年3月12日刊行)に,それぞれ発表する機会を得られたことも有意義であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,本研究課題に関連する論文1本および書評2本を発表できたことに加え,学会報告を行ない,質疑応答や意見交換を通じて今後の展望を得られるなど,一定の成果を挙げることができたが,他方で,目標としていた学術雑誌への投稿には至らなかったことから,「やや遅れている」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には研究計画に従って逐次推進するとともに,遅れている成果の公表に一層注力する予定である。ただし,新型コロナウイルス感染拡大の影響により,来年度に予定している海外資料調査は中止し,代わりに収集済みの史資料に基づき研究を推進するよう変更する可能性がある。なお,国内図書館の開館状況によっては,図書館相互利用制度を通じた国内における史資料収集に影響が出る恐れがあるが,所属大学図書館の担当者とも相談し,可能な方途を検討していきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,発注した洋書が届くのが予想外に遅延し,本年度内に納品されなかったためである。次年度使用額は,2020年度分の助成金と合わせて,物品費(図書購入費)として使用する計画である。
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Research Products
(6 results)