先史時代におけるマリアナ諸島の貝類利用の考古学的研究

2017 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 17K13565
• Research Institution: Kumamoto University
• Principal Investigator: 山野 ケン陽次郎 熊本大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (10711997)
• Project Period (FY): 2017-04-01 – 2020-03-31
• Keywords: 考古学 / マリアナ諸島 / 先ラッテ期 / ラッテ期 / 貝製品 / 貝類利用 / 製作技術

Outline of Annual Research Achievements

本年度まで実施した科学研究費（平成27～29年度、若手研究（B）「先史時代における太平洋西部島嶼地域の貝類利用の復元研究」課題番号15K16873）の研究計画にそって、平成29年度までにマリアナ諸島のうちグアム島、ティニアン島、サイパン島などにおいて貝製品が出土した先史時代の遺跡約50遺跡の一覧表を作成した。
このうち、グアム島に所在する先ラッテ期（BC1500～AD1000年）とラッテ期（AD1000～AD1700）の複合遺跡であるNaton Beach遺跡は埋葬人骨に伴って大量の貝製品が出土したことで著名である。人骨は一次葬のものが多く、貝製品の装着状況が復元できるような資料も多く存在しており、貝製品の機能を考える上でも重要である。本資料はHagatnaのGuam museumにおいて保管されている。Natonbeach遺跡については報告書が刊行されているが、貝製品の実測図はほぼ認められなかった。先史時代におけるマリアナ諸島の貝類利用の実態を語る上で本遺跡出土資料は特に重要と考えられるため、本資料の実測図化を目的とした資料調査を2017年12/10～15の日程で実施した。先ラッテ期の貝製品を中心とした24点について実測をおこなった。内容はシャコガイ科、イモガイ科製の腕輪や、ウミギクガイ科、小型イモガイ科を用いた小玉（shell beads）などが確認された。
先ラッテ期とラッテ期の貝製品と比較すると、前者にシャコガイ科やイモガイ科を素材とする腕輪などの大型の貝製装飾品が存在する点や、小型イモガイ科を用いた加工状況の異なる複数種の貝製小玉が存在することの違いが認められた。研究課題の目的の一つである貝製品の変遷図の作成について一定の見通しがついた。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

グアム島現地のスタッフとの調整をとりながら、貝製品の実測図化を順調に進めている。ただし、NatonBeach遺跡の資料はGuam museumの常設展示に使用されるため、いくつかの貝製品は実測図化が困難になる可能性がある。その場合は別遺跡の資料の図化に転換する。

Strategy for Future Research Activity

グアム島現地のスタッフとの調整をとりながら、貝製品の実測図化を進めていく。また、サイパン島の博物館で保管されている資料についても現地スタッフとの調整を図り資料調査に赴く準備をする。資料調査にあたっては、一度の調査期間が職務の都合上長くとれないことが多い。また、研究代表者一人では写真撮影、実測図化などの作業に支障が出ることがある、こうした場合はミクロネシアの研究者あるいは学生を連れて調査の補助とする。

Causes of Carryover

2017年度は当初２度のグアム島での資料調査を予定していたが、職務の都合と、資料を管理しているGuam museumの常設展示の模様替えの期間の問題もあり、対象とする資料を調査する日程を組むことができなかった。本年度に旅費として使用し、調査者を増やすなどすることで調査を推進させる。