2019 Fiscal Year Research-status Report
先史時代におけるマリアナ諸島の貝類利用の考古学的研究
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17K13565
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山野 ケン陽次郎 熊本大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (10711997)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マリアナ諸島 / 先史時代 / 先ラッテ期 / ラッテ期 / 貝製品 / 貝種 / 製作技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、グアム現地における先史時代遺跡出土貝製品の資料調査と、貝製品の実測図のトレース作業等を実施した。2019年7月22日から27日にかけては、グアムのグアム博物館およびHPO(グアムの歴史保存局)にてナトン海岸遺跡やファファイ海岸遺跡、タモン地域出土の貝製品の調査を実施した。2020年1月11日から16日にかけては、MARS(Micronesian Archaeological Research Services)およびグアム博物館にて貝製品などの資料調査を実施した。MARSではグアムの考古学研究者であるDarlean Moore氏とJudith Amesbury氏を訪ね、サイパン島のサン・ロケ遺跡の発掘調査出土遺物を見学し、意見交換をおこなった。グアム博物館ではアガーニャ・ブリッジ遺跡、タシ遺跡、サン・アントニオ遺跡などの資料を実見、実測を実施した。また、遺物実測図については2020年1月から3月にかけて学生を雇用し、2019年度までに実測した貝製品のトレース図化の作業を進めた。 マリアナ諸島の先史時代は、紀元前約1500年~紀元後約1000年の先ラッテ期と、紀元後約1000年~1700年のラッテ期に大きく分かれる。2018年度にはマリアナ諸島で出土した貝製品の分類を実施し、各時期における各製品の有無を分析したところ、貝製品の組成と各貝製品の素材や形態について時期的相違が見出すことができた。本年度の調査でもサイパン島の先ラッテ期であるサン・ロケ遺跡やHPOで調査した資料中から、中・大型イモガイ科を素材とした貝製リングを多数見ることができた。これらはマリアナ諸島のラッテ期にはほぼ存在せず、他の遺跡の出土状況からも時期的差異を示している可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに目的としていたグアムの先史時代遺跡出土貝製品に関する資料調査を、各保管機関(グアム博物館、HPO、MARSなど)において十分に実施することができた。また、資料調査で実測した資料のうち9割の貝製品についてはAdobe社のillustratorによる製図化が終了している。また、貝製品について形状や素材、用途などから分類を実施しており、これまでに集成したマリアナ諸島の貝製品出土遺跡において振り分け、貝製品の変遷を表図において製作している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに貝製品の集成作業、実測図の作成をほぼ終えている。今後は、報告書作成に向けて資料の整理と分析を進める。とくにラッテ期と先ラッテ期の両時期の貝製品が埋葬に伴って検出されたナトン海岸遺跡について詳細な分析を実施し、報告書刊行に繋げる。
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Causes of Carryover |
本年度までに、本研究における最終目標である貝製品の変遷図作成を果たすための十分な資料とデータを用意することができた。2019年度は職務の都合もあり、報告書作成に向けた分析・考察が十分に実施できなかったため、本年度において分析・考察を充実させ、報告書を作成する予定である。
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