2020 Fiscal Year Research-status Report
先史時代におけるマリアナ諸島の貝類利用の考古学的研究
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17K13565
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山野 ケン陽次郎 熊本大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (10711997)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 考古学 / マリアナ諸島 / 先ラッテ期 / ラッテ期 / 貝製品 / 貝類利用 / 製作技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マリアナ諸島における先史時代の貝製品を対象とし、これを集成、実測図化や写真撮影を実施することで基礎資料を作成、分析し、当該地域の貝製品の変遷図を作成することを第一の目的としている。前年度までに現地における資料調査を終了したため、当初は今年度末に研究成果報告書を編集、刊行する予定であったが、Covid-19の流行により、翌年度へ刊行を持ち越すことを余儀なくされた 具体的には感染予防のため、報告書作業で雇用する予定だった学生と学生の作業スペースを確保することができず、図面など報告書作成に必要な作業を十分に進めることができなかった。また、グアム博物館において撮影した撮影写真の同意書を提出する必要があったが、感染予防のため博物館自体が閉館しており、2021年3月時点まで担当者との連絡が取れていない状況にある。こうした事情を踏まえて報告書の刊行を次年度に持ち越すこととした。 今年度は貝製品の分析および一部図面の作成を実施した。具体的にはNaton Beach遺跡を始め、グアム島、サイパン島、ティニアン島で出土した先ラッテ期およびラッテ期の各時期の貝製品の新旧関係について層位学的観点から再度精査した。これにより、貝製装身具だけでなく、貝製釣針や貝斧、貝製容器といった一部の実用品について、時期的な形態変化や利用貝種の変化の可能性を見出すことができた。また、これら研究成果の一部をまとめ、沖縄県立博物館・美術館の講座において公開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グアムの先史時代遺跡で出土した貝製品の集成、遺物の実測など資料調査については、これまでの調査で十分に実施することができている。また、これら実測した資料の貝製品のデジタルトレースなど製図化についてはほぼ終了している。ただし、貝製品の変遷図については、土器編年や炭素年代測定値を基にした、より細かい年代の精査を計る必要性があり、現在分析を進めている。 Covid-19の流行に伴い、報告書作成のための学生雇用や、調査先の博物館との連絡に問題が生じているものの、貝製品の分析や報告書の作成についてはおおむね順調に作業が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現地における資料調査は終了しており、今後はマリアナ諸島の土器の編年の整理や、貝製品の年代の精査など分析を進め、報告書の編集作業に専念し、年度末の刊行を目指す。 また、学生雇用のため、Covid-19の感染対策に対応した作業スペースを確保し、地図や土器編年図など報告書掲載図面のトレース作業などに従事してもらう。また、博物館と不通な点について、地元研究者に再度連絡するなどし、博物館の状況確認と連絡に努める。土器編年や石器など、貝製品以外の遺物の最新の研究について、マリアナ諸島の考古学の専門家に文章内容の確認を依頼するなどし、その内容を補完する。
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Causes of Carryover |
Covid-19流行のため予定していた学生の雇用経費と研究成果報告書の印刷費を執行することができなかった。今年度は作業スペースを確保し、報告書図面の作成のために学生を雇用する。また、当初予定になかったが、報告書の内容をより向上させるため、マリアナ諸島の考古学の専門家に報告書の原稿を校閲してもらうための費用を用意した。以上をもって報告書を完成させ、計画通り刊行する予定である。
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