2021 Fiscal Year Annual Research Report
Archaeological Study of Using Shellfish in Prehistoric Mariana Islands
Project/Area Number |
17K13565
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山野 ケン陽次郎 熊本大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (10711997)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 考古学 / マリアナ諸島 / 先ラッテ期 / ラッテ期 / 貝製品 / 貝類利用 / 製作技術 / 人類拡散 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、先史時代における太平洋西部島嶼地域の貝類利用の内容やその変化を明らかにし、比較検討を行い、各地域の独自性と共通性を明確にする。これにより島嶼地域における人類移動と拡散を明らかにすると共に、先史文化の境界線を物質文化から新たな視点で捉えることを最終目的とした。研究期間内にマリアナ諸島における先史時代の貝製品を対象とし、当該地域の貝製品の変遷図を作成することを第一の目標として定めた。 前年度までに実施してきたマリアナ諸島の貝製品の資料集成、現地における実測作業や写真撮影などの記録作業を経て、本年度は貝製品の分析と考察をおこない、その成果を研究成果報告書にまとめた。 先行研究を基にマリアナ諸島の土器編年を提示し、先史時代をⅠ~Ⅴ期の5つの時期に区分した。貝製実用品や貝製装飾品などの時期的変遷を個別に捉えたところ、Ⅰ期(先ラッテ期早期:1500-1000BC)とⅤ期(AD1000-1521)を境にその組成が顕著に変化したことが確認でき、貝製品組成を2つの段階に分け、変遷図を示した。各段階には貝斧・貝鑿の貝種や利用部位、加工状況の変化、貝製単式釣針の形態の変化、実用品や装飾品に用いられる貝種や加工状況の変化などが看取された。 貝製品組成の変化の背景として、第1段階の貝製品組成の出現は、マリアナ諸島への最初の入植者に関連するだろう。先行研究ではフィリピン北部がその起源の候補地としてあげられているが、最新の土器研究や季節風や海流のシミュレーション分析からはその可能性が否定されている。今後本研究の成果を基に、両地域の比較研究を進める必要がある。第2段階の新たな組成の出現背景は、Ⅴ期における巨石構造物のラッテストーンの登場と関連するだろう。当該期には貝製品以外の物質文化の変容も認められ、貝製品組成の小さくない変化は人類移動や文化伝播を背景とする可能性が高い。
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