2017 Fiscal Year Research-status Report
Study on the boat building in Ancient Egypt by unraveling the marking system of carpenters' marks
Project/Area Number |
17K13570
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山田 綾乃 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (60778687)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エジプト / 木造船 / クフ王 / 造船 / 工程 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、エジプト・ギザに位置するクフ王のピラミッド南脇に埋納された古代木造船「クフ王第2の船」に関して、工人らによって記された文字資料を記録・解読し、文字あるいは記号を用いた造船システムの分析を通して、造船工程を解明・復原することにある。 2017年度計画では、第1期でクフ王第2の船の甲板・銅付属材・舷艢を、第2期で天蓋を構成する梁・柱・桁および櫂について船坑から取り上げられた部材を実測調査する予定としていた。 第1期に関しては部材実測と、甲板に記された文字の確認を実施した。その結果2017年度秋時点で、船首・船尾各1枚ずつ、その間に2枚組が5列、3枚組が2列、合計17枚の分割されたパネル状の甲板が配されていることが判明した。船長方向に長い複数の板材を並べ、等間隔で根太(桟木)置き、だぼと板材の裏面から側面に抜けるL字の貫通孔を通した縄で固定する構法が取られていることも併せて明らかとなった。本成果についてはオリエント学会第59回大会にてポスター発表し、2018年度に『昌平エジプト考古学会紀要』にて公表する。銅付属材、舷艢は図化を終えており、目下配置・構成・構法等について分析中である。 天蓋を構成する部材に関しては、甲板室上を覆う天蓋が約50㎝間隔で建てられた各舷18本の二重ベル型柱とそこに渡された梁、桁、それらを受ける柱受けで構成されていることが推察された。特に両端に右舷・左舷を意味する文字と、それぞれ異なる数字が刻まれた梁では、記された各数字が、甲板上に渡された18本の梁を船首側から数えた場合と船尾側から数えた場合のそれぞれの配置順に合致していた。造船工程を考える上で鍵となる番付の振り方の問題に関しては、Current Research in Egyptology 2018にて発表する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は、発掘調査の進捗状況による多少の影響はあったものの、概ね順調に研究データを蓄積することができた。今期成果としては、クフ王第2の船の甲板構成・配置の解明と、甲板室を覆う天蓋の構成の把握、さらに番付の出発点が一択ではないことを指摘したことが挙げられる。いずれも本研究課題の目的である造船工程復元において重要な手掛かりとなる要素が明らかになった。さらに銅付属材など想定以上の情報量と希少性を持つ部材が現れたことから、学術的意義と解明事項は着実に増しており、総合しておおむね本研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
発掘調査の進捗状況を注視しつつ、記録した一次資料をいち早く公開することを目指す。また2018年度前半は、短期間の現地調査回数を増やし、資料化の促進を測る。船体(舷側板)に取り掛かるにあたって、写真測量の技術を取り入れ、より効率的な資料化と国内での作業の円滑化を図る。 造船技術に関する専門的な意見交換および当該期の古代エジプトの様相と周辺関係の把握のため、他遺跡で発見された部材の実見・調査に赴く。
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Causes of Carryover |
2017年度の現地調査日数が当初の予定を下回ったこと、必要機材が既有のもので賄えたため。 2018年度は現地調査回数を増やすため、その出張経費に当該差額分を補填する。
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Research Products
(5 results)