2017 Fiscal Year Research-status Report
Formation and transformation of prehistoric oasis-based societies in Monsoon Arabia from the viewpoint of site location and mortuary practice
Project/Area Number |
17K13572
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
近藤 康久 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 准教授 (90599226)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アラビア / モンスーン / オマーン / 完新世 / 青銅器時代 / 水環境 / オアシス / 考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
7月12日から8月25日にかけて、スルタン・カーブース大学工学部建築工学科のNaima Benkari助教を日本に招へいし、京都で国際研究セミナーを催すとともに、今後の研究計画を打ち合わせた。研究準備のために学生アルバイトを4日間雇用した。 8月4日から6日にかけて、研究協力者の三木健裕と黒沼太一がロンドンで開催されたSeminar for Arabian Studies 2017に参加し、オマーン内陸部バート遺跡における墳墓群の立地についてのポスター発表をおこなった。続いて、8月16・17日に黒沼がオーフスのモースゴー博物館を訪問し、1970~80年代にバート遺跡で発掘調査をおこなったデンマーク隊の記録・台帳類を実見・複写した。さらに12月24・25日に近藤・三木・黒沼がオマーン遺産文化省に収蔵されているデンマーク隊の出土品を実見し、台帳と照合した。 12月28日から31日にかけて、オマーン内陸部のニズワ、マナ、およびタヌーフで遺跡分布調査を実施した。ニズワ北郊のグブラト・ニズワからワディ・タヌーフにかけて、3本の峡谷を上流へさかのぼって調査した結果、ワディ・タヌーフの渓谷に複数の洞穴・岩陰を発見した。その1つにワディ・スーク期(紀元前2000年~紀元前1600年頃)の土器片等を確認したため、これを1号洞穴と名づけた。1号洞穴の開口部の幅は約8m、奥行きは約18mであった。洞穴内の2か所に50cm四方のトレンチを設定して試掘をおこなったところ、開口部近くに設定したトレンチにおいて灰層を検出したため、放射性炭素年代測定試料を採取した。 1月1日から5日にかけて採集遺物の整理作業をおこない、遺跡データベースを構築した。1月8日に遺産文化省において来シーズン以降の調査計画を打ち合わせた。1月10日と11日にBenkari氏と内陸部の伝統集落を視察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画ではオマーン沿岸部のアルウスタ行政区ドゥクム県一帯と内陸部のアッザーヒラ行政区イブリ県一帯で遺跡分布調査を実施する予定であったが、ドゥクム県については監督官庁である遺産文化省からの調査許可が得られず、代わりに内陸部のダーヒリーヤ行政区での調査を打診された。調査許可が下りずに国内他地域での調査を打診された場合には、そのオファーに従うという当初計画に基づき、ダーヒリーヤ行政区のニズワ・タヌーフ地区で遺跡分布調査を実施した。その結果、ワディ・タヌーフ1号洞穴においてワディ・スーク期の遺物を伴う堆積層を発見するという、当初想定以上の成果を得ることができた。 調査体制については、当初計画通り考古遺物の分析に三木健裕、墓制の分析に黒沼太一の協力を得て、オマーン遺産文化省に収蔵されているバート青銅器時代墳墓群の出土品とデンマークのモースゴー博物館に保管されている調査記録・台帳類の照合に成功するという、重要な成果をあげることができた。地理情報システム(GIS)によるデータ管理及び分析を担当予定だったパートタイムの技術補佐員が離職したため、衛星リモートセンシングによる遺跡の同定作業に遅れが認められる。これについては、近藤と黒沼がこの任務をおこなうことにより、当初計画通り研究を進めることとした。 以上の進捗状況を総合的に勘案すると、研究はおおむね順調に進展していると自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
Benkari氏と打ち合わせたオマーン内陸部における伝統集落調査については、総合地球環境学研究所のコアプロジェクト「環境社会課題のオープンチームサイエンスにおける情報非対称性の軽減」において実施することとした。 平成30年度は、ワディ・タヌーフ1号洞穴の発掘調査と、ワディ・タヌーフ一帯における遺跡分布調査を継続する計画である。現地に調査拠点となる宿舎と倉庫を借りるなど、後方支援体制の整備を課題として認識している。調査成果の整理作業においては、近藤が共同編集型GISデータベースの設計運用とデータ分析、研究協力者の三木が採集遺物の整理・撮影・3次元計測、黒沼が遺構の記載を担当するというチームワークにより効率的に研究を進める。採集した人工遺物の広域編年への位置付け、墳墓の分類、放射性炭素年代測定、生態ニッチモデルによる遺跡立地傾向の分析などの成果を総合して、先史オアシス社会の形成と変容のプロセスを理解し、もってモンスーンアラビアの文化的特徴についての予察を得ることをめざす。
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Causes of Carryover |
微小な残額が発生したため、これを次年度使用額に組み入れ、適切に執行する。
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Research Products
(13 results)