2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Early Phoenicians: An Archaeological Study on their Commercial Activities and Impacts on Neighbouring Regions
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17K13573
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
小野塚 拓造 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 研究員 (90736167)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フェニキア / テル・レヘシュ / テル・ゼロール / 土器 / 交易 / 文化的接触 / エスニシティ |
Outline of Annual Research Achievements |
フェニキア人による初期の交易活動がどのようなもので、周辺地域との間にどのような接触があったのか。昨年度までの調査研究から、こうしたテーマは、前12世紀から前8世紀までの時間軸の中で検証していく必要があることが見えてきた。 そこで、2019年度は、レヘシュ遺跡でフィールドワークを実施し、主に前9世紀~前8世紀に年代づけられる居住層の出土物の整理と把握に努めた。同遺跡では前8世紀になって、エーゲ海、シリア、レバノンなど広範な地域に由来する品が顕在化することが明らかになった。在地生産の土器と搬入土器とをより正確に把握するために、昨年度に引き続き、薄片観察による分類も試みた。 研究期間全体を通して、フェニキア人の初期の居住地とされる諸遺跡で確認された物質文化について、自身で実見した資料と、出版された発掘報告書のデータから検討を加えた。その結果、「初期フェニキア」として一括りにできる物質文化のパターンは見出しにくく、交易活動も一様でなかった可能性があることを指摘できた。また、ゼロール遺跡およびレヘシュ遺跡の出土遺物を整理し、前12世紀から前8世紀までの編年を構築したうえで、フェニキア地域との接触を示す土器について検討し、フェニキアと近隣地域とのつながりはしばらく限定的であったが、前8世紀頃に拡大したことが明らかになった。 前12世紀以降の地中海東岸地域に「出現」したとされる諸集団のうち、古代イスラエル人やペリシテ人の動向やエスニシティについての考古学的研究は盛んであったが、フェニキア人についての具体的な研究はこれまで手薄であった。本研究は、1)出版されている情報を収集、整理し、2)新たな考古資料から初期フェニキアの動向を考察できた点で、学術的に意義深いものとなった。
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