2019 Fiscal Year Research-status Report
古墳時代中期王権中枢部における埴輪生産体制の実証的研究―奈良市佐紀古墳群を中心に
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17K13574
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
大澤 正吾 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (40710372)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 埴輪 / 佐紀古墳群 |
Outline of Annual Research Achievements |
古墳時代の研究では、「王陵級」と呼ばれる超巨大古墳の様相把握が最も重要である。奈良県奈良市に所在するウワナベ古墳は墳長255mを測る超巨大古墳である。外堤の一部を奈良国立文化財研究所が発掘調査し、100本を超える埴輪が原位置で取り上げられている。王陵級古墳の様相を詳細かつ具体的に知ることのできる好例である。平塚1号墳、平塚2号墳、大和5号墳という陪塚と目される古墳についても調査が及んでおり、主墳と陪塚を一体的に比較検討できるのも有利な点といえる。しかし、発掘調査報告書では資料の一部の提示にとどまり全体の埴輪群構成を知ることはできなないため、資料の再整理とその成果の速やかな公表が求められる。 そこで、本研究は、ウワナベ古墳出土埴輪を中心に佐紀古墳群出土埴輪の整理・研究を通じて、古墳時代中期の王陵級古墳における埴輪群組成の実態をあきらかにすることを目的とし、畿内中枢部における埴輪生産体制の時系列的な変化とその背後にある王権による労働力編成の在り方を実証的に論じることを目指す。埴輪群の構成を理解するためには、悉皆的な器種同定および接合検討により器種組成をあきらかにし、そのうえで同工品分析をおこない埴輪工人の編成を把握する必要がある。 3年目となる2019年度は、引き続きウワナベ古墳出土埴輪の注記、接合検討をおこない、注記・接合検討を概ね終えることができた。また、関連資料として東院下層埴輪窯出土資料の整理を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ウワナベ古墳出土埴輪の整理については、注記および接合検討をおこなう人員確保が困難であったが、2018年度から継続して学生アシスタント1名、2019年度に新規採用で1名を採用することができた。その結果、注記と接合検討を確実に進めることができ、注記・接合検討を概ね終了することができた。ただし、接合検討の未了部分や図化については、作業量に比して人員不足で当初目標に届いておらず、進捗はやや遅れていると言わざるを得ない。また、ウワナベ古墳の埴輪の供給元と目される平城宮東院下層の埴輪窯から出土した資料について、新たに整理を進め、出土遺構の整理と出土埴輪の接合・注記・図化を進めた。東院下層埴輪窯の整理については、順調な進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、学生アシスタント2名を確保でき、注記と接合検討を2018年度に比して効率的に進めることができ、注記・接合検討については概ね完了することができた。一方、接合検討の未了部分と図化については人員不足が否めなかった。そこで2020年度はそれを補うように人員や作業日の追加をおこない、未了部分の接合・図化を進める予定である。図化については、Agisoft Metashapeや三次元計測を取り入れることで効率的に進め、同工品分析に向けての基礎的な検討をおこなう。また、東院下層埴輪窯については、2019年度の整理の成果の一部を発表する予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度は注記および接合検討、実測をおこなう人員を2名確保することができたが、その勤務日数が当初予定を下回ったため、次年度使用額が生じた。2020年度は人員と作業日をさらに増やし、進捗の遅れを取り戻すべく研究を進める。
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