2020 Fiscal Year Research-status Report
古墳時代中期王権中枢部における埴輪生産体制の実証的研究―奈良市佐紀古墳群を中心に
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17K13574
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
大澤 正吾 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (40710372)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 佐紀古墳群 / 埴輪 |
Outline of Annual Research Achievements |
古墳時代の研究では、「王陵級」と呼ばれる超巨大古墳の様相把握が最も重要である。奈良県奈良市に所在するウワナベ古墳は墳長255mを測る超巨大古墳である。外堤(発掘調査報告書ママ)の一部を奈良国立文化財研究所が発掘調査し、100本を超える埴輪が原位置で取り上げられている。王陵級古墳の様相を詳細かつ具体的に知ることのできる好例である。平塚1号墳、平塚2号墳、大和5号墳という陪塚と目される古墳についても調査が及んでおり、主墳と陪塚を一体的に比較検討できるのも有利な点といえる。しかし、発掘調査報告書では資料の一部の提示にとどまり全体の埴輪群構成を知ることはできなないため、資料の再整理とその成果の速やかな公表が求められる。 そこで、本研究は、ウワナベ古墳出土埴輪を中心に佐紀古墳群出土埴輪の整理・研究を通じて、古墳時代中期の王陵級古墳における埴輪群組成の実態をあきらかにすることを目的とし、畿内中枢部における埴輪生産体制の時系列的な変化とその背後にある王権による労働力編成の在り方を実証的に論じることを目指す。埴輪群の構成を理解するためには、悉皆的な器種同定および接合検討により器種組成をあきらかにし、そのうえで同工品分析をおこない埴輪工人の編成を把握する必要がある。 4年目となる2020年度はウワナベ古墳出土埴輪や東院下層埴輪窯出土資料について整理と検討を引き続きおこなったが、未完であるため2021年度まで期間を延長し研究を継続することとした。また、東院下層埴輪窯については、2019年度の整理の成果の一部を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ウワナベ古墳出土埴輪の整理については、注記および接合検討をおこなう人員確保が困難であったが、2018年度から継続して学生アシスタント1名、2019年度に新規採用で1名を採用することができた。その結果、注記と接合検討を確実に進めることができ、注記・接合検討を概ね終了することができた。そこで2020年度は、未了部分の接合検討や図化、および総合的な分析を進める予定であった。しかし、新型コロナウイルスの影響などにより、人員や作業時間の確保が困難な状況となり、進捗は遅れる結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は新型コロナウイルスの影響等により人員や作業時間の確保が困難であった。この状況がどのように推移するのかは未知の部分が大きく、効率的かつ単独でおこなうことが可能な整理・図化・分析方式が一層必要となる。そこで2021年度は、新たに研究所に導入された三次元計測機器を積極的に用いることで効率化を図るとともに、極力単独で作業をおこない三密を避けるよう努めつつ、同工品分析に向けての基礎的な検討をおこなう。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルスの影響等により人員や作業時間の確保が困難であったため、次年度使用額が生じた。2021年度は、2020年度に予定していた予算執行をおこなうとともに、研究方法をより工夫し、進捗の遅れを取り戻すべく研究を進める。
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