2017 Fiscal Year Research-status Report
渤海遺跡出土建築部材の基礎的研究-三次元計測データの活用-
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17K13575
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
中村 亜希子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (60600799)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 渤海国 / 三次元計測 / SfM-MVS / 笵 / 都城 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度である平成29年度は、研究対象資料である紋様磚のSfM-MVS(Structure from Motion and Multi-View Stereo)による三次元計測方法の検討・洗練と、資料の収蔵先におけるデータ収集、学会における研究経過の報告をおこなった。 三次元計測方法の検討・洗練では、研究のための精度を確保でき、かつ比較的廉価な設備で三次元計測することを基準として手法と機材を選定し、撮影にはオリンパス社のコンパクトデジタルカメラSTYLUS TG-4を使用した。その結果、色付きの画像(Texture)は必ずしも高品質ではないが、紋様の細かな凹凸等の痕跡は十分に記録・表現することができると判断した。 資料収蔵先での実際の調査は、東京大学考古学研究室と駒場博物館でおこない、実質4日間程度の撮影時間で、長方磚14点と方磚16点の計30点の破片資料の計測を終えた。計測予定資料は全部で99点存在するため、おおよそ三分の一弱の資料の計測を終えたことになる。また、計測・解析と並行して、取得した複数の破片資料の三次元データの接合をおこなうことで、完形の磚の紋様の復元を進めている。なお、調査先等では、磚以外の資料も含めたSfM-MVSの実演をおこなうことで、考古資料のSfM-MVS技術による記録法の普及活動も積極的におこなった。 これら初年度の研究の内容と成果については、2017年12月に東京大学にて開催された日本中国考古学会の大会において発表し、現在、その内容について論文を執筆しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SfM-MVSの解析は、当初、平成29年度は別の業務に用いているPhotoScanプロフェッショナル版がインストールされたコンピューターを利用する予定であった。しかし、本務での使用頻度が上がり、当該研究に使用できる時間が短くなったため、ソフトのみを先に購入することにした。その結果、前倒し支払い請求をしたものの、調査旅費にかける経費が少なくなり、調査日数を減らさざるを得なくなった。データ収集できた資料数は当初の予定より少なくなったが、先に解析を進めることができたため、研究全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、資料の調査とデータ収集・解析に重点を置き、その成果を公開することにあわせ、考古遺物のSfM-MVSによる三次元計測とそのデータ活用方法の普及を積極的に進める予定である。 資料のデータ収集と解析においては、具体的に、東京大学が所蔵する渤海国の紋様磚全99点のうち、未計測分69点の三次元計測をおこなう。それらの取得データと平成29年度に計測したデータを合わせて検討することで、紋様のある長方磚と方磚の完形の笵を復元し、その数を検討する。その上で、出土地点・状況などから総合的に、渤海の紋様磚の変遷を考察する。また、焼成前後の加工痕跡が顕著な資料の全体を三次元計測することで、磚の製作や敷設の状況の解明を試みる。 三次元計測とデータの活用方法の普及に関しては、主に、実物資料を並べて比較することが困難な海外出土資料のうち、特に、瓦磚のように笵型を用いて製作した資料や、緻密な紋様があり精確な実測が困難な資料等を対象とし、その所蔵機関に所属する研究者や学生等に向けておこなう予定である。現時点では、東京大学考古学研究室と駒場博物館での実施を予定している。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、当初、所属機関が保有するパソコンおよびソフトを用いて解析をおこなう予定で予算を申請したが、本務における使用頻度が上がり、当該研究に使用できる時間が制限されたため、平成30年度に購入する予定であった解析ソフトPhotoScanプロフェッショナル版を先に購入することとなった。 不足した調査旅費に充てるため、30万円を前倒しで支払い請求しており、次年度使用額は、前倒し分を含めた請求額の残額であり、平成30年度の調査費用等の足しにする予定である。
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