2018 Fiscal Year Research-status Report
渤海遺跡出土建築部材の基礎的研究-三次元計測データの活用-
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17K13575
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
中村 亜希子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (60600799)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 三次元計測 / 考古学 / 瓦磚研究 / SfM-MVS / 東アジア考古学 / 造瓦史 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、平成29年度に引き続き三次元計測による遺物のデータ収集と、その解析をおこなった。具体的には、デジタルカメラで撮影した画像から三次元情報を復元するSfM-MVS(Structure from Motion and Multi-View Stereo)技術を用い、東京大学文学部考古学研究室が所蔵する渤海国上京城遺跡出土磚のうち、新たに長方磚17点と方磚26点を撮影・解析した。 また、これまでに取得した破片資料の三次元計測データを用いて、完形資料の紋様の復元作業を進めた。出土磚は、大半が小片を含む破片資料であり、全体の紋様を窺い知れる資料はごく少数に限られていたが、データによる紋様の接合によって、4種類の長方磚の型(笵)の存在を確認し、紋様を復元することができた。方磚についても、同様の紋様・笵の復元作業を進めている。これら笵の復元により、小片を含むほぼすべての資料について、紋様の同定が可能となったため、出土地点と型式の対応関係の検討も始めた。さらに、紋様以外に製作時についた痕跡を多く残す資料については、観察と資料全体の三次元計測をおこなうことで、長方磚と方磚の製作技法に関する検討も開始した。 他に、本研究で用いている遺物の三次元計測法の普及活動も積極的におこなった。調査先における計測のデモンストレーションや、研究会ハンズオンにおける講師の担当、学会や研究会誌における発表等をおこなうことで、文化財の記録・研究における三次元計測の手法と有用性について紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査費用の不足により、資料調査の回数が制限されたため、研究の進捗状況は当初の想定よりもやや遅れている。また、使用機材も、計画時に比べ廉価なものに抑えたため、必ずしも本研究に満足な精度のデータを得られているとは考えていない。しかし、個人研究における遺物の調査・研究に三次元計測が普及するためには、限られた時間・予算の中で、必要なデータを得るための手法の開発と選定といった視野も重要であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
計測と解析の手法に係る問題に関しては、平成29・30年度までにほぼ解決したため、最終年度は、データ収集を終えていない資料の調査・計測・分析を終え、方磚を含む出土紋様磚の笵の復元と、出土地の分析、製作技法の復元の完了を目指す。 なお、当初計画していた三次元データの公開については、技術的には解決できるものの、データの管理・流通等の問題があるため、時期的な目途はついていない。引き続き、資料の所蔵機関と相談の上、どのように情報を公開できるが検討していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、平成31年度分の研究費を一部前倒し請求した。次年度使用額はその残額であり、もともと平成31年度に使用する予定であったものである。
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