2021 Fiscal Year Research-status Report
食料生産をめぐる人間・自然物・技術のネットワークに関する地理学的研究
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17K13579
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊賀 聖屋 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70547075)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オルタナティヴ / 食料供給体系 / アクター / ネットワーク / エビ養殖 / インドネシア東ジャワ州 / シドアルジョ県 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,インドネシア・西ジャワ州における環境保全型エビ生産システムの調査に着手する予定であった.しかし昨年度に引き続き,新型コロナウイルスの流行によりインドネシアにおける調査の実施が困難となった.そのため,2019年度までに実施した「東ジャワ州シドアルジョ県における環境保全型エビ養殖業に関する調査」の成果を取りまとめる作業を中心に行った.その概要は以下の通りである. シドアルジョ県の環境保全型養殖は,取り巻く自然環境への開放性の高い生産様式であるがゆえに,急速な水質の変化や病原菌の発生といった不測の事態に見舞われる可能性が高い.そのような中,ローカルな生産の場では,さまざまな自然物(ガンガン,アピアピなど)の取り込みを通じて,予期せぬ出来事への対処が行われている.また,在来的な知識・技術を用いたリスク管理が行われている点も特徴的である. 注目したいのは,シドアルジョ県の環境保全型養殖をめぐるネットワークは,伝統的な生産様式への回帰というように単純化して捉えられないという点である.クロンポク・タニ(生産者組織),民間企業,環境NGOといったオルタナティブフードシステムの構成部門間の協働を通じて,生産に関わる科学的な知識がローカルな生産の現場へと落とし込まれている.環境保全型養殖のネットワークは,在来知だけでなく科学知をも取り込みつつ構成される存在として捉えられる. また,ネットワークを構成するのは,必ずしもローカルな要素だけではない.フェアトレードに取り組む企業がシドアルジョ県の養殖池と結びつき,海外での生産環境の改善に関する知識・技術をローカルな生産の場へと移転していた.このことは,グローバル化に対するオルタナティブな性格の強い生産実践が必ずしもローカルな空間に閉じたものではない点を示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度に実施予定であったインドネシア・西ジャワ州における環境保全型エビ生産システムに関する調査がコロナウイルスの感染拡大のため延期となってしまったためである.研究期間の延長を申請し,フィールドワーク等にかかる費用を繰り越した.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度まで実施していたインドネシアにおけるフィールド調査を継続的に実施する予定である.ただし,コロナウイルスの流行状況がまったく読めないことと,インドネシア国内におけるフィールドワークの実施が現実的に可能かどうか不明瞭である.最終年度は,日本国内のエビ生産システムに関するフィールドワークを中心に研究を進めていくことも検討している.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で,2021年度に実施予定であった調査費用を次年度へと繰り越した.状況を見極めつつ,国内外のエビ養殖に関するフィールドワークに使用する予定である.
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